では、効果的な「自己開示」とはどのようなものなのか? 少し意外にも思えるが、「ある程度の自慢話を含めることで、相手からの好感度を高める」ものだということがわかっている。
「ハロー効果」という心理効果をご存知だろうか? 「ハロー効果」とは、目立った特徴の影響で、ほかの要素の評価がゆがめられてしまう認知バイアスのことである。たとえば、「東大を卒業しているから、仕事がバリバリできるはず」や「テレビに出ているAさんが言っているんだから間違いない」といった考えだ。
これらの例では、2つの要素に関係性がないにも関わらず、「東大卒業」や「テレビ出演」といった顕著な特徴の影響で、ほかの要素への信頼度が高まってしまう。わかりやすい例でいうと、テレビCMに有名人を起用するのも、この効果を狙っている場合がある。
この「ハロー効果」については、10万部を突破したふろむだ氏の著書、『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』(ダイヤモンド社)でも解説されている。「ハロー効果」を使って、相手に自分の実力を正当評価(勘違い)させる方法など、同書には心理学的な観点がふんだんに盛り込まれており、かなり興味深い内容だった。
話を元に戻すと、「自己開示」に自慢話を含めることで、「ハロー効果」を起こすことができる。しかし、自慢話が多すぎると相手は退屈だと感じてしまうし、少なすぎれば、そもそも「ハロー効果」を起こすことができない。自慢話は諸刃の剣にもなりうるわけだ。
では、自分の好感度を高めるために適切な自慢話の量はどれくらいなのか? 実は元愛媛大学教授の中村雅彦教授が次のような実験を行っている。
被験者は女性が「自己開示」を行っている映像を見て、その女性に対する魅力を評価。流れる映像は5種類あり、自慢話の占める割合が20%、40%、60%、80%、100%とそれぞれ異なる。
この実験の結果、好感度と自慢話の割合に関係を表したグラフは逆U字になった。つまり、自慢話が少なすぎると好感度は低く、自慢話が60%だと最も効果度は高くなる。そして、それ以上自慢話の割合が増えると、今度は再び好感度が下がっていくという結果になったのだ。
中村元教授は、「自分のポジティブな面だけを強調する人は、“誠実さ”や“謙虚さ”に欠けるためであろう。これに対して、自賛するだけでなくある程度自己の弱みや欠点にも言及する人物は真実を語っているとみなされ、魅力を増大させる」と言及している。
営業でも恋愛でも相手からの好感度を高めたい場合は、自分のイメージを高めるための自慢話が重要だ。同時に自分の欠点をさらすことで、より強い信頼関係を築くことが可能となる。
まずは自慢と弱音や悩み相談の割合を6対4にすることを意識してみよう。ぜひ、「自己開示」を戦略的に活用して、仕事やプライベートで信頼関係を築いていただきたい。
【参考文献】
榎本博明 『自己開示研究の展望(2) −自己開示の集団差− 』(1990)
中村雅彦 『対人魅力の規定因としての自己開示』(1985)
高木浩人 『自己開示行動に対する認知と対人魅力に関する研究』(1992)
山本マサヤ
【山本マサヤ】
心理戦略コンサルタント。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催。これまで数百人に対して仕事やプライベートで使える心理学のテクニックについてレクチャーしてきた。また、メンタリズムという心理学とマジックを融合した心理誘導や読心術のエンターテインメントショーも行う。クラウドワークスの「トップランナー100人」、Amebaが認定するう芸能人・著名インフルエンサー100人に選出
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