1億円分の高級時計を買った場合
時計店の店員によってパスポートに貼り付けられた「免税物品購入記録票」にはロレックス3本、合計約390万円とある。免税になった消費税は約31万円だ。
Cさんによると、その後、別の男が運転する車に乗り込み、御徒町や新宿にある時計店を5、6店巡り、各店舗で100万円前後の高級腕時計を複数本購入したという。拘束時間にしておよそ4時間で、Cさんの母親は2万円の報酬を受け取ったというから、かなり割のいいバイトだ。
この日、男らは約1000万円分の高級時計を購入。C母名義で購入したことで、消費税相当の約80万円分安く買えたことになる。
仮にこれらを同じ価格で売却した場合、C母への報酬を抜いても約78万円が儲かるというわけだ。
ちなみに免税購入した商品は、出国時に持ち出すことが原則となっているが、出国時に確認されることはない。C母も出国時、購入したはずの時計について聞かれることはなかった。元国税職員で税理士の松嶋洋氏は話す。
「欧州など諸外国では出国時に免税で購入した商品を税関に見せたあと、還付される方式が一般的ですが、日本の同制度では出国時に『免税物品購入記録票』を提出するだけで、物品の確認はしない。そのため、免税制度を悪用した代理購入も露見しにくいんです」
その後、男が大量の時計をどうしたのか、Cさんは知る由もない。
取材を進めるうち、免税転売を行っている半グレグループの構成員・M氏に話を聞くことができた。
「日本ではロレックスの場合、定価で転売できるが、利幅を考えると中国に持って行くのが一番いい。高級時計の関税が60%と高いから、ロレックスは日本以上の価格で売れる。ただし、中国に無申告で持ち込む必要があるので、若干のリスクはある」
M氏のグループは、中国での転売がメインだが、他にも免税転売に手を染める不良は最近、東京や大阪で増えており、国内で転売して利ざやを稼ぐ者もいるという。M氏によると、なかには時計店とグルになっている場合もあるとか。関与しているのは半グレや在日中国人、ヤクザなどが多いという。