こうした観点から、近年実施されている
「野党合同ヒアリング」は、重要な動きです。森友・加計問題から始まったようですが、次第に他の問題にも拡大しています。
そこで、この
合同ヒアリングをさらに拡大し、予備審査に発展させていくことが有効です。各省庁の予算案や法案について聴取するのはもちろんのこと、審議会などで検討中の課題、問題の当事者からのヒアリング、現地調査なども行うといいでしょう。
そして、
野党が多数派に転じたときは、野党合同ヒアリングを国会での正式な予備審査に発展させ、与党の事前審査を廃止するのです。事前審査を廃止する代わり、前述したとおり、衆参合同の小委員会で予備審査(議案提出前の説明聴取など)をすればいいのです。
与野党ともに、予備審査での勉強を踏まえて、国会での本審査に臨み、必要であれば修正案を提出して、意見を反映させるのです。そうすれば、予算・法律の成立過程は格段に透明化し、有権者からの信頼も増すでしょう。行政としても、各党への対応業務が減少し、効率化に直結します。
この視点から、現行
の野党合同ヒアリングにいくつか改善を加えるといいでしょう。以下は、野党への改善を求める点です。
● すべての野党合同ヒアリングの
インターネット中継とアーカイブ化(YouTubeに専門チャンネルを設けることも有効でしょう)
●
出席者・発言者の名前・肩書を議員・官僚ともに分かりやすくすること(手書きでもいいので、名前立札があるといいでしょう)
●
進行役となる議員を置くこと(ヒートアップした議員を落ち着かせたり、不十分な回答にさらなる説明を求めたりする役割の議員です)
●
進行表や出席者名簿、資料のアップ(PDFで結構でしょう)
●
開催スケジュールの周知(各党のホームページやTwitterなどでOKです)
すでに、インターネット中継など実施されているものもありますが、これらを
徹底することが大切です。正式な国会の会合ではありませんから、主要な説明者や質問者の背後に座る若手官僚や政策秘書なども、大いに発言し、質問するといいでしょう。参加している議員や関係者はもちろんのこと、インターネットを通じて、多くの有権者が理解を深める機会になればいいのです。
また、野党が多数派になったときの国会改革案として、予備審査の実施を合意しておくことも重要です。それにより、野党合同ヒアリングの意義がさらに理解されることでしょう。
このように、
国会少数派の野党であっても、実のある国会改革を主導できるのです。それに刺激を受けて、与党も野党に転落したときを想定した国会改革案を議論し、与党での事前審査を廃止すれば、国会での審議の充実が一層進み、
言論のガチンコ勝負が国会で展開されることになるでしょう。
<文/田中信一郎>
たなかしんいちろう●千葉商科大学特別客員准教授、博士(政治学)。著書に『
国会質問制度の研究~質問主意書1890-2007』(日本出版ネットワーク)。また、『
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)では法政大の上西充子教授とともに解説を寄せている。国会・行政に関する解説をわかりやすい言葉でツイートしている。Twitter ID/
@TanakaShinsyu