クルド人の夫が難民申請却下で収容。妊娠中の日本人妻を追い詰める入管の理不尽

専門家「A.Yさんは在留特別許可を認められるべき」

A.Yさんとその妻Wさん

A.Yさんと妻のWさん

 一方、入管問題に詳しい大橋毅弁護士は東京入管の主張を批判する。 「法務省の在留特別許可に係るガイドラインでは『日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合』について、『特に考慮する積極要素』だとしています。また『逃亡の恐れがあるなどの収容の必要性のあるなしに関係なく、すべて収容する』という全件収容主義については『入管法の誤った解釈である』と、私も含め何人もの弁護士が指摘していることです。日本人の妻がいて、しかもその妻が妊娠しているというA.Yさんのケースは、在留特別許可を認められるべきものですし、収容しなればならない理由もありません」  大橋弁護士によれば、オーバーステイの外国人であっても日本人と結婚していれば、ほぼ在留特別許可を得られるという。 「むしろ難民認定申請者の方が、在留特別許可が得られにくいという傾向があります」(大橋弁護士)  こうした傾向について大橋弁護士は「入管側の都合があるのではないか」と語る。つまり「在留特別許可を含めて、難民の受け入れ件数を増やしたくない」という“難民鎖国”ゆえの恣意的運用との疑いがあるのだ。  A.Yさんは3度目の仮放免申請を行い、現在その結果待ちだ。A.YさんもWさんも理不尽な入管の対応ゆえに、精神的に追い詰められている。本件は、難民に対する人権侵害であるだけでなく、家族の日本人に対する人権侵害でもある。  今国会では入管の「庁」への格上げが審議される。難民認定や在留特別許可の審査の不透明さ、人権を蔑ろにした全件収容主義の是非にも、国会で大いに追及されるべきだろう。 <取材・文/志葉玲(ジャーナリスト)>
戦争と平和、環境、人権etcをテーマに活動するフリージャーナリスト。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、共著に『原発依存国家』(扶桑社)、 監修書に『自衛隊イラク日報』(柏書房)など。
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