クルド人の夫が難民申請却下で収容。妊娠中の日本人妻を追い詰める入管の理不尽
現地政府やテロリスト集団にその身の安全を脅かされ、必死で日本に逃げてきた難民の男性。彼は、来日後に出会った日本人女性と恋をして結婚した。だが、法務省・入国管理局(入管)の、あまりに理不尽な対応が、この若い夫婦を苦境に追い込んでいる。
婚姻届けが受理されて3年以上経つのに、東京入管は男性に在留資格を与えず、その収容施設に拘束してしまったのだ。しかも、妻である日本人女性は妊娠していて、そのことを入管側に伝え男性は仮放免申請を行ったものの、それすら2度も却下されているのだという。
現在、東京入管に「収容」されている男性、A.Yさん(24歳)はトルコ南部ガジアンテップ出身。同国政府から迫害を受けている少数民族のクルド人だ。
アルカイダ系の武装勢力「ヌスラ戦線」(現「シリア解放機構」)から因縁をつけられ、「殺す」と脅迫を受けていることや、トルコでは徴兵制があり、兵士になれば同胞であるクルド人への迫害に加担させられる可能性が高いことから、亡命を決意したという。
2013年7月に来日し、難民認定申請を行った。妻である日本人女性Wさんとは、日本語習得のためネットでのやり取りをしていたうちに知り合い、2015年4月に結婚。役所に婚姻届けを提出した。同年8月、配偶者が日本人であることを根拠に、A.Yさんは在留特別許可を得られるよう入管に求めた。
ところが、その後、いくら待っても在留特別許可は得られなかった。そして、認定率0.1%以下と異常なまでに“狭き門”である難民認定申請も案の定「不認定」となり、A.Yさんは今年5月に入管の収容施設に「収容」、つまり拘束されてしまったのだ。
「やっと子どもが生まれるかもしれないのに、収容されるなんて……」
東京入管の収容施設で面会した筆者に、A.Yさんはこう語る。
「妻は結婚後に病気を患い、卵管を切除しなければなりませんでした。それでも体外受精で、なんとか妊娠することができたのです。本当は治療に夫として付き添いたかったのですが、収容されているために妻が一人で病院に行かざるを得なかったことが悔しいです」
A.Yさんの妻であるWさんも「はじめての妊娠なのに夫が収容されてしまい、不安で夜も眠れません」と嘆く。
「赤ちゃんが動くのを、一緒にお腹を触れて感じることができないのが、悲しいです」
Wさんは妊娠6か月。本来ならば、夫の助けが必要な時期だ。
日本人女性と正式に結婚していて、犯罪歴もないにもかかわらず、A.Yさんが在留特別許可を認められないどころか収容されたのはなぜなのか。収容されてから、A.Yさんは2度の仮放免申請も行った。それさえ認めないのはなぜなのか。
東京入管の広報担当者に問い合わせると、「個別のケースにはお答えできない」としながらも「あくまで一般論としていえば、在留特別許可は全て認められるわけではなく、法務省のガイドラインに沿って可否が判断される」という。
「在留資格のない外国人は全件収容主義に基づき一律に収容するのが、入管としての方針」「仮放免については、個別事案ごとに諸般の事情を総合的に判断する」(東京入管・広報)。
難民認定申請は却下、配偶者が日本人でも入管施設に「収容」
日本人の妻は妊娠中、犯罪歴もない。なぜ「仮放免」すら認められないのか
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