アジアを狙う東急のまちづくり戦略。「田園都市」がまるごと輸出で東急バスも

渋谷ストリーム

9月に開業したばかりの「渋谷ストリーム」。渋谷駅周辺では東急グループによる再開発が進む

 東急グループといえば、9月13日に開業した「渋谷ストリーム」など、渋谷駅の都市開発や田園都市線沿線のベッドタウンのまちづくりなどをイメージする人が多いだろうが、実は最近、タイを初めとした東南アジア諸国でも東急グループが主導する大型の「東急流まちづくり」が各地で行われているのをご存知だろうか?  その一つが、遡ることおよそ半年前。5月23日に渋谷のホテルで開催された発表会である。

タイ各地で華ひらく「東急流」のマンション開発

 5月23日に行われたのは、タイ・バンコク市での、タワーマンション建設などを含む大型の住宅分譲プロジェクトだった。
事業説明会

事業説明会で手を組む東急電鉄星野取締役専務とSansiri社ウタイCOO。

 これまで永年に亘ってタイ各地での開発事業に携わってきた東急グループだが、2014年からは、タイ大手財閥「サハグループ」と合弁会社「サハ東急コーポレーション」を設立し、大型賃貸住宅をバンコク都市圏南部のシラチャに開発するなど、本格的な不動産開発・まちづくり事業にも乗り出していた。  この大型開発は、タイ大手の不動産デベロッパー「Sansiri Public Company Limited」(以下、サンシリ社)との提携第2弾・第3弾となるもの。東急グループは昨年8月にサンシリ社の合弁で「Siri TK One Company Limited」を設立しており、同社との分譲住宅第1弾となった「taka HAUS」(269戸、マンションタイプ)は、すでに大半の物件が売約済みとなっている。
taka HAUS

すでに分譲されている「taka HAUS」。“優雅で活動的な 鷹”がコンセプトだという(東急グループ提供)

 提携第2弾となる「(仮称)エカマイ11」は2021年の完成予定で、地上38階建、約550戸の高層コンドミニアム。いわゆる「タワーマンション」タイプで、東急グループがタイ国内でタワーマンションを建設するのはこれが初のこととなる。  建設予定地近隣は、高架鉄道の駅や大型ファッションビル、映画館、日系スーパー(マックスバリュ、UFMフジスーパー)も多数進出するバンコク有数の商業集積地であり、都心部での最先端のライフスタイルを望む「20~30代の若年層」の入居を想定。また、提携第3弾となる「(仮称)スクムビット50」は2019年の完成予定で、地上8階建2棟、合計約400戸の低層コンドミニアム。コンセプトに「都市における特別な安らぎの空間」を掲げ、都心に通勤するタイ人の入居や、外国人駐在員への賃貸を目的とするタイ人・外国人投資家の購入を想定しているという。
スクムビット50

(仮称)スクムビット50の建設計画地周辺の写真(東急グループ提供)。

 このとき発表されたような開発の特徴として挙げられるのが、東急グループが日本国内の都心部で手がけている「マンション開発ノウハウ」が存分に生かされているということだ。  東急電鉄の星野取締役専務によると、今回の開発の目標は「バンコクにおいても(日本国内の)都心のタワーマンションと同様に『職住近接』という新たなライフスタイルの提案をおこなう」こと。両物件は「都心部へのアクセスが良好」という点をウリにしており、都市化による人口増加と自動車の普及により交通事情が悪化しているバンコク市においても日本国内で見られるような「マンションに転居することによる都心回帰」の動きを生み出すことが狙いだ。また、日本国内の東急グループの高級マンションでも見られるような、住民専用の「図書室」や「ジム」などといった共用設備も充実させる予定で、こうした「日本流」「東急流」のマンションライフスタイルを提供することも目標としている。  東急電鉄の須山国際事業部都市開発部担当部長は「(日本人駐在員家族も多いという立地条件から)日本人の方が求めるものを提供しやすい、運んでくれるような会社、仮に東急百貨店であれば使うだろうし、より近い日系スーパーにもお願いするかもしれない」「お客様視点で一番いいものを提供したい」と述べ、近隣エリアの施設と提携するかたちで「東急ならでは」の新サービスをおこなう可能性についても示唆された。
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なぜ「タイ」なのか?
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