米国と接近する中でもロシアからS-400を購入したインド
それをロシアが黙視しているのではない。なにしろ、これまでインドの兵器の70%はロシア製である。1947年から現在まで両国の間で250項目の合意が交わされているということで両国の絆は非常に強い関係にある。
そのため、米国と接近していつつある中でも、ロシアとは新たにヘリコプターMi-17-V5の48機の購入、同じくヘリコプターKa-226Tのインドで200機の生産及びメインテナンスなども合意が交わされている。(参照:「
ABC」)
インド側も、防衛の強化としてミサイルシステムS-400を5基、金額にして50億ドル(5500億円)の購入を決めたのである。10月5日にプーチン大統領がインドを訪問した際にこの購入の署名が交わされた。納品は2020年とされている。米国は当初同機能を備えたパトリオットを薦めたが、性能面でインドを説得できなったようである。
プーチンのこの訪問で既に機能している2基に続いて、新たに6基の原発の建設が加えられて20項目の合意が交わされた。(参照:「
HispanTV」)
インドがロシアからS-400を購入したことに対し、米国が「敵対者に対する制裁措置(CAATSA)」でもってインドに制裁を科すという懸念は当然浮かび上がった。しかし、インドの外相スシュマ・スワラージは、外圧に対して「我々は他国からのプレッシャーに即応して我々の外交を形成させているのではない。以前も米国からの制裁に従わなかった」と述べているように、モディ政権下のインド外交は自国の利益を最優先する姿勢を明確にしている。
当の米国も、ポンペオ国務長官が9月にニューデリーを訪問した際に、「米国はインドの場合はまだ決めていない。インドのような国に制裁が影響するとは思われない」と述べて、インドに関しては例外とする意向を仄めかしたのである。(参照:「
La Vanguardia」)
実はこうした「例外とするだろう」という予測はジャーナリズムの世界でも囁かれていた。
『
El País』(10月4日付)によれば、ジャーナリストのマクシム・ユーシンはロシア紙『Kommersant』の論評の中で次のように言及しているという。
曰く、「米国はインドがロシアから兵器を購入した場合に、米国が適用しようとする制裁措置からインドを外すだろう」「命令したり譲歩させたりの政治はモディ首相には通用しないというのをトランプ大統領のメンバーは理解しているはずだからだ」と。
では、あの強気なトランプが、なぜインドには譲歩せざるを得なかったのだろうか?