もちろん、何でもすぐに買い換えればよいわけではない。光熱費などランニングコストの部分だけでなく、製造や廃棄にかかるエネルギーも含めて考えなければ、社会にゴミを増やす結果になる。流行に合わせて、購入して5年しか経っていないテレビを大型の高精度の製品に買い替えるなどというのは、エネルギー、コスト、環境のどの角度から見ても愚かな選択だ。
製品が生まれてから寿命を迎え、廃棄されるまでにかかるトータルのエネルギーコストを、「ライフサイクルコスト(LCC)」と言う。例えば、ノートパソコンは製造時のエネルギーがほとんどで、使用時のエネルギー消費が少ないため、頻繁に買い換えると社会全体のエネルギーコストが増えてしまう。そのため、限界ギリギリまで活用したほうが社会的にはエコになる。
冷蔵庫はどうか。冷蔵庫はライフサイクル全体の中で、使用時に8割以上のCO2が排出される。使い方を工夫するとしても、10年から15年という寿命を過ぎて働かせてしまうと、使用時のエネルギーが必要以上に増加してしまうことになる。LCCの視点から考えても、冷蔵庫に関しては適切なタイミングで切り替えたほうが良さそうだ。
また廃棄というと、埋め立てたり焼却されたりするイメージを持つ人がいるが、家電リサイクル法により収集・分解されてリサイクルされている。冷蔵庫の部品はほとんど鉄とプラスチックなので、リサイクルの難易度は高くはない。
2010年度冷蔵庫のライフサイクルイベントリ分析報告書より(一般社団法人日本電気工業会環境技術専門委員)
ちなみに冷蔵庫は、サイズが大きいものほど省エネ性能が高い。テレビやエアコンなど他の家電は、基本的にはサイズに応じて消費電力が大きくなるので「なぜ冷蔵庫だけ?」という疑問に思うかもしれない。冷蔵庫は、他の家電とは電子機器としての構造が異なっているため、サイズの大小は省エネ性能に関係がない。クーラーボックスと同じで、食品を入れる箱が大きいか小さいかという違いだと考えれば良い。
重要なのは、効率よく冷やすためのコンプレッサーと、冷やした空気を外に逃さないための断熱材の性能だ。大きなサイズの冷蔵庫はそこに資金が投入されるため、初期費用は高くなるが、省エネ性能も高くなる。逆に小さな冷蔵庫は、メーカーとしてはコストをかけるメリットが少なく、やや性能が落ちる傾向にある。とはいえ、省エネ性能だけを重視して無駄に大きなサイズを購入する必要はない。生活に合わせ適切なサイズを選びたい。