「学生たちの人権」を声高に訴えながらも、保護者から「我らの敵」とまで反発されるチョ・ヒヨン教育監。実はその発端は、彼自身の「矛盾」が起因している。
2014年に行われたソウル市の教育長選挙で当選したチョ氏。
彼が掲げた公約は、「エリート校」と名高い外国語高等学校や、自律型私立高校(自私高)の廃止。当時チョ氏は「本来の高校という役割を忘れ、名門大学入試ありきの存在となっている」と指摘し、そのために一般校が荒廃化することに警鐘をならしていた。
事実、外国語高校が行う「英語キャンプ」には、300~400万ウォン(約32~43万円)の多額な費用がかかると言われている。(
参照:ハンギョレ)そんな多額な費用でも、参加者は毎年多く集まってくる。なぜなら、キャンプに参加した学生たちには、大学付属高校の模擬面接や、入学広報部長の特別講義、自己紹介文の添削など、手厚い「入試対策」が受けられるためだ。
また、一番問題視されているのは、入学選考において、このキャンプの参加是非が問われている可能性を否定できない点だ。学費を工面する保護者の経済格差が如実に表れるところだ。
本来、そうしたエリート校廃止の政策を掲げるチョ氏は多くの保護者からの支持を受けそうな人物に思えるのだが、なんと驚くべきことに、チョ氏の息子二人ともこの外国語高等学校を卒業していたのである。チョ氏はインタビューで、「息子が外国語学校に行っているからといって、その学校の信者になるわけではない」と話しているが、ほかの保護者が感じた違和感は相当なものであっただろう。この時のわだかまりが現在の反発を招いているのも、少なからずあるように思う。
話しを戻す。
今回の髪型の規定改正にあたり、生徒と保護者の意見を参考にするので、もしかすると、自由化を宣言しながらも黒髪しか許されない学校が出てくるかもしれない。しかしそれが不満ならば、髪型を指定していない学校を選べば良いのではないかということになるだろう。ただ、生徒側にあらゆる選択肢が増えたということ、これが非常に大きな意味を持っている。
日本も然り、韓国もまた然り。協調性を重んじる国民性があり、「和」を乱さないことへのこだわりが強い。黒でなければ不良。黒髪でなければならない。黒髪でないのならば、どんな理由であれ皆と同じ色にしろ」――。協調性へのこだわりが一種の呪いのように同調圧力として生徒たちにのしかかる。
つまるところ大人たちが、子どもの自主性を信じていないという点で、日本と韓国は非常によく似ているのだろう。
<文/安達夕>