豊洲移転は本当に正しい選択なのか? 「築地」ブランドは失われ単なる物流倉庫と化す

築地市場と豊洲市場の基本的な話

 築地市場は1918年の米騒動をキッカケに、1923年に生鮮食品が広く適正な価格で取引されるように中央卸売市場法を制定し、1935年に開業しました。  現在は大手スーパーなどが卸売市場を通さない方法で取引をしているので、1980年代には80%以上が卸売市場経由で入荷していましたが、現在は約50%ほどになっています。それでも「築地」が世界のブランドになっているのは、仲卸業者たちの厳しい「目利き」によるものが大きく、しっかりと品質の良いものを選び、良質な生鮮食品を提供することを仕事にしてきたため、一流レストランからも信頼され、愛されてきたのです。  しかし、近年になって大手スーパーなどを中心に「目利き」を嫌う傾向が出てきました。仲卸業者を通すと、良い商品は値段が高く、悪い商品は値段が安くなってしまうため、何でもいいから安く仕入れたい大手スーパーは悪い商品ばかりを掴まされることになります。これでは顧客を満足させることができないため、目利きをせずに、良い商品も悪い商品もゴチャゴチャの状態で、あとはお客さんの目利きが悪かったと言わせたいのです。  築地が「目利き」によってブランド化されていくことになったのに、目利きのプロたちを使い勝手が悪く、どう見てもお客さんが来るとは思えない豊洲市場に押し込んだのは、単純に築地市場から移転させたかっただけでなく、目利きをなくし、良い商品と悪い商品をなるべく分けない世界を実現するためではないかと言われています。  そんな豊洲市場なのですが、実は、どう頑張っても赤字が続くビジネスモデルになっています。  築地市場はトントンだったのですが、豊洲市場は維持していくのに都民の税金を使わなければならない仕組みだということです。今でも駐車場代などが高いことに不満が出ているのに、これを少しでも解消しようと思ったら、さらに料金を値上げなければならなくなり、ますます豊洲市場を利用する業者の負担は増えることになります。  また、豊洲市場は常に魚を冷やせるコールドチェーンに対応しており、氷を使う必要がないと考えているようですが、セリ市場の室温が30度に迫るなど、夏の暑さが一段落している時期にコレなので、今後、冷凍マグロが溶けるような室温にならないとも限りません。そんな時に氷で冷やすこともできないので、本当はなかなか欠陥だらけです。  ただ、メディアは悪いことばかり報じるわけにもいかないということで、豊洲市場が築地より広いとか、ヨーロッパに輸出するために衛生管理の国際基準を満たすための認証可能な施設だとか、いろいろなメリットを話しているのです。ただ、築地をそのまま使おうとは言いませんが、築地を市場関係者の意見を取り入れて改修したら本当は「世界最強の市場」ができるのではないかと思います。なぜこうした戦略を取らないのかがまったく理解できません。
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