当選証書を授与した後、知事の椅子に座る玉城知事。でき上がったばかりの知事の名刺を手に「最初に誰に渡そうかな」と笑みを浮かべる
初登庁日の会見は、災害対策本部の会議への出席によって当初の予定より大幅に短くなり、30分足らずで打ち切られた。しかし筆者は、当選翌日の10月1日、選挙事務所で玉城知事の話を聞くことができた。その内容も紹介したい。
――県知事選で辺野古新基地反対の民意が示されたことを受けて、安倍総理に訴えたいこと、伝えたいことは何ですか。
玉城知事:「ぜひ玉城デニー沖縄県政と協議、話し合いをする姿勢を持ってください」ということです。どういったことを話すのかについては個別具体的な話がありますが、基本的には「沖縄県と政府が話し合う場を作る」ということを示してくださいということです。
(国と沖縄県の法廷闘争について)いじめられている側が「いじめられた」と言っているのに、「それがいじめであるのかないのかは、訴えた方が証明すべき」というのは理不尽な話です。我々は事実を述べているのに放置されている。ということは、結果的に差別されているのではないか。
――辺野古新基地建設が土砂投入直前になっている状況に、どう抵抗していくのでしょうか。
玉城知事:これは個別具体的な戦術なので私が明らかにするわけにはいきませんが、あらゆる手段を講じて辺野古新基地を作らせないということです。理不尽なことに対しては、「それはおかしい」と思う人たちのうねりになっていく。
日本政府、安倍政権はそういううねりをわざと起こさせたいのでしょうか。「そういうことが起きるのを予期して、(わざと)対話せずに法廷闘争に出るのか」という疑問の目が、世界から向けられると思います。それは安倍政権に対して非常に大きなマイナスで、窮地に追い込まれてしまうことになると思います。
「日本国民の要求に対して一顧だにしない」「仮想敵国を煽って、必要以上に防衛装備に予算をかけようとする」という安倍政権への批判がもっと強くなっていくでしょう。辺野古の件も法廷闘争だけの話にならないよう、我々もあらゆる手段を講じて抵抗していきます。その時に私が持っているアメリカ人と日本人のハーフというアイデンティティが多分、どこかで役に立つことが出てくるかも知れません。
翁長前知事も当選後、新基地建設よりも「対話」の重要性を説いていた
安倍政権が、翁長県政時代と同じような「対話なき法廷闘争」を続けた場合には、「アメリカを含む国際社会に、沖縄の民意を伝えて徹底抗戦をする」と玉城知事は予告したといえる。ちなみに筆者は4年前、翁長前知事が当選した翌日にも同じ質問をしていた。
――安倍総理は県知事選の結果のいかんにかかわらず、新基地建設を強行しようとしています。安倍総理におっしゃりたいことはありますか。
翁長知事(当時):その時(基地建設を強行した時)には、安倍総理の「日本を取り戻す」というのがいかにゴマカシであるのか、ということがよく分かってくると思います。そして民主主義国家・自由主義国家として、アジアの同じ価値観を持った国同士で「手を結びましょうよ」という中で沖縄の基地問題を解決しなければ、日本を民主主義国家として誇ることはできない。だから日本が今一度原点に帰って“誇れる”ようにするには、沖縄の基地問題を解決しなければならない。そうしないと、日本という国は世界から変な目で見られるのではないかと思います。
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安倍政権の強硬姿勢を世界中に訴えて国際的包囲網を作ろうとしている点でも、玉城知事は翁長前知事の遺志をしっかりと引継いでいるといえるのだ。
<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた
『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他
『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数