本来ブランドマネジメントを考えている企業であれば、これは極めて深刻な事態であるはずです。
自社の事業にクリティカルな「ブランド」を毀損するような炎上が、何故起こってしまうのでしょうか。
海外の事例を見てみます。例えば、H&Mが、一部オンラインストアで、黒人のモデルに対して「サル」などと書かれたシャツを販売していた件です。(参照:
H&M faced backlash over its ‘monkey’ sweatshirt ad. It isn’t the company’s only controversy-Washington Post)
多数の著名人から「もうH&Mとは仕事をしない」などとステートメントを出され、販売計画にまで影響をするほどでした。要は無茶苦茶大事になったわけです。結局、幹部が謝罪することになりました。
しかし、これはあくまで担当者レベルの話で、大きな予算を組まれたキャンペーンでここまで炎上するというのは、欧米では考えづらいでしょう。
日本は、ビッグバジェットのキャンペーンですら、時々炎上してしまう、という点において海外とは一線を画しています。
男性マネジメント層に最適化されていくクリエイティブ
男性差別、と思われる広告もあります。
しかし、炎上する内容は、お金を持っていないやモテない男性を馬鹿にしたり、「イケてないおっさん」的なものを揶揄したりするものが多く、自分がイケてて金持ちだと思っている人を批判するようなものは多くありません。
つまり、あくまで
男性社会というカーストの中で下位の人を叩くものです。
例えば、消臭剤や芳香剤のCMで体臭を気にするのは、焼肉食べたあとだったり、野球をやった後の高校生という「前提ありき」のものです。
加齢臭を気にするのも、ごく一般的な中年サラリーマン男性という事例は多いけど、「会議で偉そうなことを言っている社長からも加齢臭が……」みたいなCMは見たことありません。まあCMもたくさんあるので、どこかにあるかもしれないですが(予防線)。
と考えると、日本の広告表現、あるいはクリエイティブというのは概ね、「クライアントである大企業の、男性マネジメント層に最も気に入られそうな表現」が使われているのではないか、という仮説が成り立ちます。
ちなみに、僕は「女性が男性上司に容姿を馬鹿にされて『変わらなきゃ』と気づく」というストーリーを見たとき、いかにもクライアントの偉い人が喜びそうなファンタジーだなーと思いました。