タトゥーを巡る話題が増えてる日本。実はタイではタトゥー否定派が増えている!?
このところタトゥーの話題を目にするようになった。これからオリンピックを迎える中、ますます外国人観光客が増えるであろう中、温泉などこれまでタトゥーお断りだったところが再検討されていることや、ガンで亡くなった格闘家の山本KID徳郁さんに絡み、タトゥーでMRI(磁気共鳴画像)検査が受けられるのか否か、そしてタレントのりゅうちぇるさんが子どもが生まれたことで名前を身体に刻んだといった話だ。
山本KID徳郁さんの件以外の2件は、議論の内容の根底は同じことなのではないかと思う。否定派の意見を大雑把に言えば「日本ではタトゥーはよく思われない」ということだ。
筆者が暮らすタイではタトゥーが理由で施設内への立ち入りを禁止したりするところは見かけたことがない。おそらく欧米もほとんどがそういったものだろう。しかし、それはそもそもタイではタトゥー=護符刺青という出自であり、前提が違うからという点が大きい。
タイのタトゥー文化は護符刺青が出発点になっていると言ってもいい。護符刺青は西暦1292年に現在のタイ北部チェンマイに成立したラーンナー王朝時代にはすでに始まっていたとされる。ラーンナー王朝は当時あった近隣の王国や、現在のミャンマーなどと度重なる領土争いがあった。
兵士らは自らの肉体を駆使して戦うことが職業だ。当然ながら、誰だって死にたくないどころか、ケガだってしたくない。そんなときに「ヤントラ(タイ仏教の経典の言語パーリ語で「神聖な」という意味。主に幾何学模様)」を僧侶に彫ってもらった。現在のタイでは「プラクルアン」と呼ばれる土や金属、セラミックなどで造られた仏像型のお守りを身に着けるが、当時はその製造技術がなかったために直接お守りを身体に彫ったのだ。
だから今でも敬虔な仏教徒が多いタイではサックヤンへの理解があり、そのため、欧米のタトゥーにもまた寛容である。タイ人が個人主義で、他人がすることに関して否定をしないという風潮があるというのもその寛容さに拍車をかける。
日本の場合、縄文時代からタトゥーは存在したとされる。そのころは部族の装飾や、敵への威嚇などいろいろな事情があっただろう。しかし、儒教伝来時に罪人の顔などに刑罰のひとつとして彫るようになり、なにより明治5年から昭和23年までイレズミ禁止令が出ている。この期間で日本人にはタトゥーが「悪」という印象ができあがったのだと言われている。禁止されているものをあえて彫る行為は、例えるなら校則で指定されている制服をあえて着崩している不良のようなものだ。
そんな歴史的な背景があるからこそ、タイと日本ではタトゥーに対して社会的な拒否反応に大きな違いがある。しかし、勘違いしていけないのは、タイだからとて、タトゥーはアウトローであることは間違いないということだ。
タイにおけるタトゥーの文化的背景
1
2
ハッシュタグ