台風24号における鉄道の計画運休は「正解」だったのか?

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 9月最後の週末に列島を駆け抜けた台風24号。そこで話題のひとつとなったのが鉄道の「計画運休」だ。特に首都圏ではJR東日本がはじめて首都圏のほぼ全路線で計画運休を実施した。それに追随するように私鉄路線の間でも運休路線が相次ぎ、日曜日の夜は台風来襲前に首都圏の鉄道はほぼストップしていた。ネット上では、この決断を評価する声が多かったが、この計画運休、果たして問題はなかったのだろうか?

日曜日の夜だから可能だった計画運休

「どのみち台風が来ればダイヤが乱れたり運休に追い込まれるのはわかっていることですからね。利用者が事前に予定をたてられるようにもなるわけで、計画運休自体はよかったと思います。実際、すでに関西ではこれまでも幾度か計画運休が行われており、利用者からも好評のようです」  こう話すのは、業界事情にも詳しい鉄道ライターのB氏。ある鉄道会社の駅員も「あらかじめ運休を周知していたこともあって、混乱もほとんどなかった。お客様への案内もスムーズにできたのでよかった」と安堵の表情を見せた。  しかし、鉄道ライターのB氏は「この計画運休はもともと利用者数が少なくなる日曜日の夜だからできたという面がある」とも指摘する。 「さらに、JR東日本は20時ごろから運休と発表していましたが、実際には多くの路線で23時ごろまで列車が走っていました。もとより計画運休とは時間を区切ってあとはまったく運転しないというわけではなく、気象条件や利用者の状況を見て運転打ち切りに持っていくというものですから、特にJRの対応に問題があったとは言えません。とはいえ、多少混乱を招いたのも事実でしょう」  また、台風が過ぎ去った翌10月1日の朝が何よりの大問題。台風被害によって列車の運転がままならず、当初は始発から平常運転の予定が、これまた多くの路線で長時間にわたって運転見合わせとなってしまったのだ。通勤時間帯に重なったことで、駅には大行列ができるなど大混乱を呼ぶ結果となった。 「台風のような自然災害に見舞われると、鉄道に大きな被害が出るのは想定の範囲内でしょう。事実、今回の台風24号では九州の豊肥本線で土砂流入や盛土の崩壊などの被害が出ています。首都圏での倒木などの被害は、本来ならば織り込み済みのはず。台風直撃時はともかく“その後”も見据えた運転計画になっていたのかどうか、その点については正直疑問です」(B氏)  ある鉄道会社の関係者N氏は、「首都圏のような多くの路線が入り組んでいるところでの運転計画は非常に難しい」と打ち明ける。例えば2011年の東日本大震災。発生した3月11日には首都圏の全路線がストップしたが、夜中になって地下鉄路線だけが復旧した。これが結果として“悪手”で、山手線の主要ターミナルに多くの人が滞留して帰宅困難者を駅に溢れさせることになったのだ。 「通勤通学に2路線以上使っている人も多いですから、1路線だけ動いても目的地に到達できず、結果として利用者に迷惑をかけるし、混乱をもたらす。東日本大震災ではそのことを痛感しました。ですから、大規模な運転見合わせ計画の場合は他の事業者の状況を踏まえて検討することが欠かせない。滞留してしまった利用者への対応や運転再開時間や迂回路線の案内などもうまくしないといけません。今回の台風で、それが適切だったかどうかというと、反省点はありますね」(N氏)
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鉄道事業者だけでなく、利用者の意識も改善の余地あり
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