大政党ほど有利に働く、日本の選挙制度<民意をデフォルメする国会5重の壁・第3回>

二院制でいいとこどり

 衆議院と参議院との二院制のいい点は、一つの議会構成に、無理やり様々な方向性を同居させなくても、それぞれの院で役割分担することで、いいとこどりできることです。そこで、それぞれの院の役割から、選挙制度を考えてみましょう。  衆議院の主要な役割は、党の単位で議員が動き、首相を選出し、内閣に信任を与え、チェックすることにあります。多数派が与党となり、少数派の野党との間で、政党間の対決になりがちです。対決といっても悪いことでなく、与野党が安易に馴れ合わないことで、政府に緊張感をもたらします。  そのため、衆議院の選挙制度は、党の選択を主眼に置く制度が適当となります。有権者が議員の集団たる党を選択し、もっとも多数を得た党あるいは政党連合が、与党として政権を担うわけです。  他方、参議院の主要な役割は、議員個人の知見や判断によって、内閣や衆議院の決定をチェックすることにあります。党所属であっても、安易に内閣や衆議院と馴れ合わないことで、政治・行政全体に緊張感をもたらします。  そのため、参議院の選挙制度は、人の選択を主眼に置く制度が適当となります。有権者が議員個人の能力や知見に着目して候補者を選択し、知の集合体として、内閣と衆議院に対峙するわけです。 【短期集中連載】なぜ政治へのあきらめが生まれるのか? 民意をデフォルメする国会5重の壁 第3回 <文/田中信一郎> たなかしんいちろう●千葉商科大学特別客員准教授、博士(政治学)。著書に『国会質問制度の研究~質問主意書1890-2007』(日本出版ネットワーク)。また、『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)では法政大の上西充子教授とともに解説を寄せている。国会・行政に関する解説をわかりやすい言葉でツイートしている。Twitter ID/@TanakaShinsyu
たなかしんいちろう●千葉商科大学准教授、博士(政治学)。著書に著書に『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない―私たちが人口減少、経済成熟、気候変動に対応するために』(現代書館)、『国会質問制度の研究~質問主意書1890-2007』(日本出版ネットワーク)。また、『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)では法政大の上西充子教授とともに解説を寄せている。国会・行政に関する解説をわかりやすい言葉でツイートしている。Twitter ID/@TanakaShinsyu
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