――外国人として起業したわけですが、苦労したことは?
もともと就労ビザは持っていたんですが、日本で会社を作るときは、経営管理ビザに切り替えなくてはいけないんですね。その条件がものすごく厳しいんです。一割くらいしか取れなくて。
――キツいですね。
そうです。大変なんです(笑)。
彼ら(韓国企業側スタッフ)は、日本でこのデバイスがヒットすれば、韓国でも販売できると考えていたようです。なので、まず日本でやろうと。
それなら一緒にやろうということで、彼らと合弁会社を作ることにしました。
――林さんが、日本での販売を担当するという感じですか?
いえ、企画も一緒にやっていました。エンジニアは向こうにいたんですが、企画までかなり一緒になって、プロトタイプを作るところまではこぎつけたんです。
――それなのに、なぜ事業を精算することになったんでしょうか?
クラウドファンディングも行って、初期の開発に必要な目標金額は達成していました。それを元に、モックアップは作って、インターペットという、日本では最も大きいペットの展示会に出せるところまではこぎつけたんです。
ところが、展示会に出す三日前に契約を解除すると一方的に通達してきたんです。
――一方的に?
そうです。そもそも、展示会でメディアやサプライヤーに見つけてもらい、その結果次第で、量産するか決めよう、という取り決めになっていたんですね。
それなのに、なぜかその三日前に、契約を解除したい、量産がコスト的に難しい、と言われて。その日はずっと号泣していました(笑)。
――展示会はどうなったんでしょうか?
主催の方に相談したんですが、向こうもとにかく穴が空くことだけはやめてほしい、ということだったので、空いたスペースで撮影会を行うことにしました。
知り合いのカメラマンさんに片っ端から連絡をして、予定が付く人を探して、ペットと一緒に写真を取れるようなスペースを整えて。
契約解除から三日しか時間がなかったので、搬入の日に一人でビッグサイトに行ったら、周りはデコレーションだけでものすごいお金をかけているんです。
その横で、契約解除した会社の看板を泣きながら剥がして。風船もデコレーションもないので、家の壁に貼ってた愛犬の写真を貼って(笑)
――撮影会は盛り上がったんでしょうか?
ただ写真を撮るだけでは誰も来ないことはわかっていたので、いろいろ工夫をしました。例えば、従来はメールアドレスを聞いて、後からデータを購入するか選んでもらう形式でした。
でも、それではなかなかその場の雰囲気で売れません。
そこで、その場ですぐに、撮った写真から選んで、後から加工したデータでお送りするようにしたところ、やはり皆さん我が子が可愛いのか、何枚も買ってくれる方も多くいらっしゃって(笑)
それから、知り合いの雑誌編集の方にお電話をして、グランプリを取った子を雑誌で載せるようなタイアップが出来ないか?と伺ったところ、「いいよ」と快諾してもらって。
結果的には、大盛況になって、水も飲む暇もないほどでした。