裁量労働制の拡大に向けた政府の再挑戦が始動。結論ありきを許すな

 JILPTの労働者調査では、Q32として「現行の裁量労働制に関してご意見・ご要望等がありましたらご記入ください」という自由記述の設問があった。しかしこの結果は、冊子に収録されていない。これについて国会審議中に、長妻昭議員らがJILPTに提供を求め、JILPTが提供に応じた、という経緯がある。  国会審議の中で安倍首相が、裁量労働制の労働者の満足度は高いとJILPT調査結果に基づいて答弁したことから、その満足度別に自由記述結果の開示を求めたものだ。その結果を見ると、「満足」と答えていた者でも自由記述では「個人への業務の割りふりがポイントになる(過重労働について)。その意味でも上司の管理能力の向上が必須と思う」と記述している場合もあり、裁量労働制は業務量の調節が適切にできてはじめて機能する仕組みであることがうかがわれる。  また、「やや不満」や「不満」とした者では、「会社側が残業代を合法的に抑制するための単なるツールとなっている」「残業代が抑制されているだけ」「会社が違法残業を合法化する手段として導入している様に感じる」など、残業代の抑制に裁量労働制が使われていることへの不満が強く表れている。  このような結果について筆者は、雑誌『世界』の2018年5月号掲載の論考「裁量労働制を問い直せ」で紹介した。また、Q32の自由記述結果は、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の類型別に、さらに満足度別に、JILPTのホームページにて今年4月16日に公開された(参照:『裁量労働制等の労働時間制度に関する調査 (労働者調査及び事業場調査)平成25年11月中旬~12月中旬実施)』の自由記述項目二次集計結果)。  しかしその公表結果を見ると、発表の日時がなく、また、元の調査である調査シリーズNo.104と調査シリーズNo.105の調査結果と関連づける記述もリンクもない。そして、裁量労働制の労働者の生の声が詰まったこの重要な自由記述結果が、先日の9月20日の第1回検討会の資料としては、提供されていないのだ。ペーパーレス会議であり、資料の枚数には制約がないにもかかわらず。  筆者はここにも、不都合な事実を隠蔽しようとする事務局の姿勢を感じざるを得ない。次回の第2回の検討会には、この自由記述結果も資料として提出することを、事務局に強く求めたい。 <文/上西充子 Twitter ID:@mu0283> うえにしみつこ●法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『就職活動から一人前の組織人まで』(同友館)、『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆。
Twitter ID:@mu0283 うえにしみつこ●法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。また、『日本を壊した安倍政権』に共著者として参加、『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆している(ともに扶桑社)。単著『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)ともに好評発売中。本サイト連載をまとめた新書『政治と報道 報道不信の根源』(扶桑社新書)も好評発売中
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緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」

不信任案決議の趣旨説明演説をおこなったのが、衆院で野党第一党を占める立憲民主党の代表・枝野幸男議員である。この演説は、その正確さ、その鋭さ、そして格調の高さ、どれをとっても近年の憲政史にのこる名演説といってよいものだ。