このように、選挙運動のルールは、候補者が大きな政党や組織に支えられて立候補することを前提につくられています。これは、組織に属さない、あるいは組織への忠誠心の少ない人が、一般的になっている現代社会に合わせたルールではありません。かつて、多くの有権者が、企業や団体、組織等を通じて、政治的な主張を展開していた高度成長時代の名残です。 　つまり、選挙運動ルールは、大きな組織の代理人となる候補者が得票しやすい方向へ、民意をデフォルメする役割を果たしています。大組織がバックにない候補者は、有権者に考え方や政策を伝える方法が実質的に制限され、「適当な候補者がいない」「候補者の違いが分からない」との有権者の不満にもつながっています。 【短期集中連載】なぜ政治へのあきらめが生まれるのか？ 民意をデフォルメする国会5重の壁 第2回 ＜文／田中信一郎＞ たなかしんいちろう●千葉商科大学特別客員准教授、博士（政治学）。著書に『国会質問制度の研究～質問主意書1890-2007』（日本出版ネットワーク）。また、『緊急出版！　枝野幸男、魂の3時間大演説　「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』（扶桑社）では法政大の上西充子教授とともに解説を寄せている。国会・行政に関する解説をわかりやすい言葉でツイートしている。Twitter ID／@TanakaShinsyu