北海道地震発生直後の現地リポート。新千歳空港には毛布が積まれていた

空港で、毛布にくるまる利用客の姿

 夕方に飛び立ったバニラエアはガラガラだった。やはり余震のおそれその他の理由で北海道入りを延期・中止した人が多かったのだろう。そのわりに、筆者が座る一列三席は埋まっており、しかも熱愛中のカップルだった。せっかくなら思い切りイチャイチャさせてあげようと思い、離陸後筆者は何列か後ろの完全な空席に移動した。  新千歳空港は最低限の空港機能を取り戻し、旅客機の予定通りの離着陸については何の問題もなかった。  だが手荷物受取を過ぎると、異様な光景が目に飛び込んできた。普段より明らかに閑散としている新千歳空港において、無人のカウンターに毛布が山積みとなっており、いまだに何組かの団体が床に座って毛布にくるまっている。 「この毛布、どうしたのですか?」  隣のカウンターにいた女性に聞いた。 「地震で空港が止まっている間に、夜を過ごされた方々のために用意した毛布です」  ブラックアウトということは、当然空港内の冷暖房も完全に止まっていたに違いない。当然、本州より早く秋がきている北海道において、空調がない夜は寒かっただろう。  フロア全体を見回すと、コンビニのローソンは営業しているが、モスバーガーは休業している。通常であれば、土曜の夕方に飲食店が休むはずがない。物流の問題なのか、冷蔵・冷凍庫の不能により食材の安全を確保できなかったからかまではわからないが、よほどの事態であることは間違いない。廊下の照明も暗いままとなっている。  ただ、幸い建造物倒壊の恐れはなさそうだ。壁のどこかにヒビが入っているとか、どこかのタワーが倒れそうになって傾いているという状況ではない。新千歳空港近辺は震度6を記録したらしいが、空港の耐震構造は見事である。  筆者の最終目的地はニセコ。鉄道にせよ、バスにせよ新千歳から約三時間かかるわけだが、到着した午後六時前後になると普段でもニセコ行きのバスはもうないという。  元々の筆者の読みでは、地震発生後少しでも時間を遅らせたほうが鉄道その他が復旧している可能性も高いから現地入りしやすいという考えだったが、バスがないのは盲点だった。  新千歳からニセコは名古屋から大阪と同じくらいの距離がある。だから「北海道で地震」といっても北海道全体が機能停止したわけではなく、余震で危ないわけでもない。こういうときこそ、ボランティアはしなくてもよいから北海道に行ってカネを落とすことが復興につながるのではないか。  鉄道のほうは、辛うじて動いているという。急いで地下に降りると、ちょうど六時発の「小樽行き」があるという。少しでもニセコがある南西方面に進みたいと考えた筆者は迷うことなくこの電車に乗り込んだ。  普段あまり稼働していないからか知らないが、スマホでJR北海道の公式サイトをみても復旧の様子が全然わからない。むしろ、ツィッターのほうが役に立ったりする。見ている限りだと、小樽より先は動いてなさそうだ。小樽からニセコまでバスが出ていればいいのだが。  そうして、筆者を乗せた電車が小樽に着いた。次回は小樽の状況を報告したい。 【タカ大丸】  ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。  雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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