それでも過積載が完全になくならないのは、ドライバーの意思以上に、「企業の意思」の存在が大きい。
実際、取り締まりが強化される昨今、「走ることを食べること」にしている繊細なトラックドライバーが、自らの意思のみでわざわざリスクを犯してまで違反をすることは考えにくいし、大型連休に入る直前には、実際筆者も得意先から「(連休に対応したくないから)今日これも持って行ってよ」と、過積載を強要されたことは数え切れないほどある。
得意先からそう言われると断りにくく、ドライバー自身の会社からも「2往復するのは時間的にもコスト的にもかかるため、積めるだけ積んで来い」、「荷主は客。言われた通り積め」と暗に命令されるケースも少なくない。
こうした過積載を強要する企業は、コンプライアンスがしっかりと確立されていない小規模のところがほとんどだ。しかし、一旦トラックが道路に出れば、企業に大きいも小さいもない。乗用車とタイヤ並べて走り始めた過積載のトラックは、いつ事故を起こしてもおかしくない「走る凶器」と化す。そういう面では、過積載を最終的に許したドライバーの責任は計り知れない。
トラックは、人間の生活や経済を豊かにするクルマである一方、人間を死に至らしめるに凶器にもなる。
悲惨な交通事故をなくすには、クルマのドライバー1人ひとりが安全に運転できる環境作りを社会全体で作っていくと同時に、隣のクルマがどういう危険性を秘めているのかを知り、常に予測しておく必要があるのだ。
【橋本愛喜】
フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『
トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは
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