急激な大量放流を招いたダム操作規則について、水源連の遠藤共同代表に続いて質問をした「公共事業チェック議連」事務局長の初鹿明博衆院議員(立憲民主党)
――7月5日14時に気象庁が記録的豪雨の予測を出した時、なぜ事前放流をしなかったのですか。
所長:雨が降る総量が記録的というのは分かっていましたが、短時間でどれぐらい降るのか、ピーク(最大)雨量までは分かりませんでした。野村ダムの場合は、可動の流下能力が1000トンと高い。だいたい(の大雨)は流すことができる。そこを超える雨、時間雨量で30ミリを越える雨ですが、そこの予測が出ておれば(事前にもっと放流したでしょう)。
――記録的豪雨というのは総量だけでなく、ピークを含めて記録的豪雨ということではないのですか。
所長:そういう報道もあるかも知れませんが、「野村ダム周辺地区でこれぐらいの雨が降る」という報道は出ていなかったと思います。
――「かつてない雨量」と予報が出ていたのだから、なぜ、もっと事前に放流をしなかったのですか。
所長:そんなに大きく放流量を上げることはできないのです。国道もあって県道もあって、ダムの水位を下げるために大量放流をすると、道路が崩壊する可能性がある。
どういう操作をすれば被害が最小限に抑えられたかの検証を
――最大放流量に一気に持っていくのではなく、ピークになるもっと前から緩やかに流していれば、被害は少なくて済みましたよね。ある程度の被害が出たにしても、今回のような死者が出るような大きな被害にはならかったのでは。
所長:いまの規則で操作する限りは、事前にもっと(ダムの水を)流せなかった。
――操作規則を変えれば良かったのではないでしょうか。気象庁が記録的豪雨の予測を出した5日14時の時点で、すぐに「今のままだと問題があるから操作規則を変えるべきだ」と。それは、国交大臣が指示することだったかも知れませんが。
所長:そうなのです。現場ですぐに操作規則を変えられるほど、そんな簡単なものではないのです。国交大臣から知事から、全部チェックしてOKといったものですから。
――安倍総理がすぐに「今の操作だと危ない。ルールを変えても対応するように」と指示を出さないといけなかったと。
所長:そうおっしゃっても、「あの時点でどんな予測が出ているのか」という内容にもよるのです。そこを決断するのはどうなのですかね。
――国交省の知恵を結集して予測すれば、もう少し別のやり方、事前に放流する選択肢もあったのではないか。
所長:予測をして、雨が降らなかった(場合もありえます)。
――空振りになっても(貯めていた水が利用でいない利水面ではマイナスでも)人命のほうが大切だという考え方は成り立たないのでしょうか。
所長:人が亡くなったわけですから、そういう話になるのかも知れません。しかし、事前に想定してダム操作をするわけではないのです。「(記録的豪雨の)恐れがあります」では非常に難しい。
なぜここまで硬直的な対応しかできなかったのか。豪雨予測が外れて空振りになるリスクを取ってでも事前放流をするべきではなかったのか。「どういう操作をしていたら最小限の被害で済んだのか」という検証は、徹底的に行うべきだろう。
<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた
『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他
『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数