ダム操作のルールに固執して事前放流せず、「確信犯的な殺人だ」と住民怒りの声

「記録的豪雨が来る」と知りながら、「ルール」にそって事前放流せず

公共事業チェック

9月3日、愛媛県の「野村ダム」(西予市)と「鹿野川ダム」(大洲市)を視察する「公共事業チェック議連」の国会議員(立憲民主党3名、共産党2名)

 9月3日の愛媛県ダム視察を終えた宮本岳志衆院議員(共産党)が、現地での国交省の説明を紹介したとたん、地元住民は怒りをぶちまけた。 「ダム下流域が浸水することが分かって大量放流をしたのなら、確信犯的な殺人やないか!」  超党派議員連盟「公共事業チェック議員の会」の国会議員5名は9月3日、大量放流で下流域に浸水被害をもたらした「野村ダム」(西予市)と「鹿野川ダム」(大洲市)を視察。国交省中国四国整備局のダム管理事務所からのヒアリングで、急激な大量放流をするに至った致命的な操作ミスが明らかになったのだ。  その致命的なミスとは、「中小規模洪水」を対象とした現行のダム操作規則が今回のような「大規模洪水」では急激な大量放流を引き起こすのは確実なのに、不適切な現行ルールに固執し続けてしまったことだ。  国会議員に配布されたダム放流量の推移(グラフ)を見ると、アクセルとブレーキを踏み間違えたような“自虐的操作”が浮彫りになる。  7月5日14時に気象庁が異例の記者会見を開いて「かつてないほどの記録的豪雨の恐れがある」という予測(警告)を出したのだから、ダム管理の現場でも当然、迫りくる記録的豪雨に備えて事前にできる限りの放流をして貯水量の余裕を持たせる体勢を整えるべきだった。  しかし実際には野村ダムでは、雨が激しくなっていく最中の7月6日22時から放流量を一定(300トン)に保ってダムを満杯に近づけてしまった。  治水機能がほとんど発揮できない“無防備状態”に記録的豪雨が襲って来た結果、翌7日6時20分から「異常洪水時防災操作」と呼ばれる垂れ流し状態に陥った。20分間で1000トンも急増する緊急大量放流で下流の水位が一気に上昇、死者5名。浸水650戸の大きな被害を出したのだ。
次のページ 
大規模洪水のダム操作規則での対応を緊急提案すべきだった
1
2
3