しかし、これらは手配した旅行代理店にすべての責任があるわけではない。北朝鮮は観光客を受け入れてやっているという受身的な立場をとっているため元々のキャパシティが小さく、観光やサービス、契約という概念が他の一般的な諸国とは大きく異なる特殊な国だからだ。すべての決定権は、北朝鮮側にありお客はそれに従うのみで苦情は認めないし、当然返金や保証はしない。これが北朝鮮の不変のスタンスだ。
本来であれば、北朝鮮に旅行をする人間はそれらを含めて理解して北朝鮮旅行をしているはずだと語るのは、2012年、金日成主席生誕100周年イベントへ日本人観光客として訪朝した女性だ。
過去のマスゲームではサーカスのようなアクロバティックな演出も随所に(2011年撮影)
「この時、一般観光客はほとんど滞在許可されず少なかったにもかかわらず、事前に告知なくホテルは西山ホテルへ変更されるわ、訪問地は減らされるわ、あれダメこれダメで不自由な滞在でした。ですが、それが北朝鮮であり、特に大型イベントのときには旅行者が不利益を被るのは北朝鮮はごく当たり前のことです。それも踏まえて特別な滞在を楽しむんですよ」
彼女はこのときが3回目の訪朝だったから北朝鮮の実情を理解していたのだろう。しかし、初めて訪朝した人にはそんな北の事情など知る由もなく、タイや台湾のような日本人が気軽に行ける観光地くらいの認識を持っていてもなんら不思議ではない。
特に今年は北朝鮮情勢が大きく好転し、世界中から観光客が増えている北朝鮮へ日本人観光客は300人ほどが訪朝すると見込まれている。これは昨年比3倍ほどとなる。旅行者自体が増えて、訪朝者の裾野が広がれば、「北朝鮮は特殊な国だ」という認識が希薄な人も比例して増えていることだろう。
今回、訪朝した日本人観光客の中で初訪朝者の人がどのくらいいたのかは定かではないが、キツイ洗礼を受けてしまったようだ。
<取材・文/キム・デウォン>