9日の客席は満席だったという(写真は2011年撮影)
9月9日に建国70周年を迎えた北朝鮮、70周年を盛大に祝うために終了させたはずのマスゲームを5年ぶりに復活させるなどが事前に話題となり過去最大規模の外国人観光客が平壌を訪れた。日本からは一般観光客が65人ほど訪朝したと見られ、これだけの日本人が同時期に訪朝するのは、2002年以来、最大となる。
9日のマスゲーム初日には金正恩党委員長が姿を見せるなどメーデースタジアムは大興奮に包まれ旅行者には非日常的な経験ができたようだ。
北朝鮮は建国70周年イベントを盛大に成功裏に終わらせることができたと強調している。しかし、その裏では北朝鮮の「キャパシティオーバー」によって、しわ寄せが旅行者へ容赦なく襲いかかっていた。
日本人など多くの外国人が宿泊する特級ホテルの「高麗ホテル」や「羊角島ホテル」は、諸外国からの政府関係者や招待客へ割り当てられたため一般観光客は、1級ホテルとされる「西山ホテル」や10年以上外国人向けに使用していなかった「両江ホテル」へダウングレードさせて宿泊させた。代理店へのダウングレード通知は、9月4日前後だった。しかも特級ホテルからの差額はなしとの無慈悲な一文が添えられていた。
今回のメインイベントであるマスゲーム初日も過去に例がない厳しさでカメラなどの持ち込みは禁止され、入場時にボディチェックを実施する徹底ぶりだった。加えて9日、初日のマスゲーム観覧には「正装着用」が必要で、正装を持参してくるようにとの通知もホテルのダウングレード通知と同じ9月4日前後とこれも直前だった。
また、マスゲームのVIP観覧席800ユーロの予約をしていた人も一方的に一等席(500ユーロ)の席に格下げされ、300ユーロの差額返金もなしという有様。高麗航空のビジネスクラスで購入していた人も、「予約がない」の一点張りでエコノミーへグレードダウン(差額2万円これも返金なし)などなど……。
また、平時なら行けるような観光地も行けず、4日ほど滞在しても行けたのは数か所の観光地と店で、他はひたすら待機時間だったことから北朝鮮側の余裕のなさを感じさせる。
北朝鮮側のキャパオーバーとゴタゴタを象徴するものとして、北朝鮮への英語ツアー最大手である「高麗ツアーズ」(中国・北京)は、確保していた北京への飛行機へ乗ることができず深夜3時発の臨時便に振り替えられたり、さらにひどいのは、日本国内最大手の旅行代理店は、振替便だと北京からの同日帰国便に間に合わないため旅行自体の日程を1日短縮し丹東への国際列車で出国せざるをえず3泊4日ツアーが、2泊3日、平壌滞在時間35時間ほどの弾丸ツアーになっている。
それでもマスゲーム初日にしかも金正恩党委員長を見ることができたのは、今回のツアーの価値を最大限に高めたと言えるだろう。ただ、ツアー参加者からは不満の声が……。
「飛行機から国際列車へ変更され、しかも日程自体が1日短縮され差額返金がないなんてありえないです。同行していたツアー会社社長から北朝鮮側から返金がないから代理店としても返金はできないなんて言われても納得できませんよ。丹東から大連に着いたのは深夜、しかも5時間ほどで叩き起こされて北京へ移動って悪夢を超えたひどい罰ゲームでしたよ」(ツアー参加者)
また、この旅行代理店はツアースケジュールに軍事パレードとモランボン楽団公演観覧が含まれていた。にもかかわらず、それらの催しは実施されなかったのである。この点についても参加者から不満の声が上がった。
軍事パレードは、北朝鮮政府からの招待者のみが観覧でき、アントニオ猪木参議院員や中国の招待者などは観覧しているが、一般観光客は基本的に観覧できていない(一部ヨーロッパからの一般観光客が特別観覧したとの情報もあり)。これについては各代理店、認識していたはずの情報だ。モランボン楽団は国内向けの公演も実施されたとの報道もない。