「ハーフ」の記者が感じた、テニス・大坂なおみを巡る「日本人らしさ論」への疑問

日本に生まれ育ち、日本語を褒められる違和感

 続いては大坂選手の日本語能力に関するもの。「片言の日本語で一生懸命話してる姿がかわいい」というコメントは褒めているようにも思える。また、大坂選手のケースに限らず、外国訛りや片言で話す姿に「キュンとする」「萌える」というのは、日本だけでなく他の国でもよく見られる反応だ。  筆者の場合は、「日本語うまいねえ」と言われることが多い。日本生まれ、日本育ちであることを伝えても、そう言われるのだから驚きだ。実は今年、久しぶりに会った遠戚にも「日本語が上手だねえ」と言われたことがあった。 「ずっと日本に住んでますし、日本人ですよ?」  そう返すと、「ああ、そうだよね。いや~、でもスゴいよ」と、話が通じるどころか、さらに畳み掛けてくる始末である。内心では「このおっさん、何言ってんだ……」と思いながらも、その場ではそれ以上何も言わなかった。しかし、なんだかモヤモヤした気持ちは続いた。  相手としては褒めているつもりだったのかもしれない。だが、はたして同じことを“日本人っぽい”見た目の人に言うだろうか? 読者の皆さんも自分が「日本語うまいですね!」と言われるところを想像してみてほしい。なんだかバカにされてたような気分になるはずだ。  いっぽう、頑張って勉強した英語を褒められると素直に嬉しい。英語圏出身の人と話していて、「Your English is really good」と言われると、「よっしゃー!」という気持ちになる。当然だが、これは自分の努力が認められたと感じるからだ。  大坂選手は現在も日本語を勉強中だという。自身の日本語を「かわいい」と言われて、彼女がどう感じるかはわからないが、頑張って勉強した日本語を「うまい」と褒められたらきっと嬉しいはずだ。  では、大坂選手の話し方をことさらに強調するのはどうだろう? ワイドショー番組が、彼女の日本語にカタカナのテロップをつけたことで批判を浴びている。 「ガンバリマス」 「アリガトウゴザイマス」  外国人が話す日本語をカタカナにする……というのが、いつから始まった文化なのかはわからないが、“日本人っぽくない”発音、発声であることを強調する意図があるのは明白だ。今回の大坂選手に対しても、「“日本人っぽくない”話し方をしてますよ〜」という部分を強調したかったのだろう。  訛りや話し方がアイデンティティを構成する要素のひとつであることは間違いない。方言だってそうだ。しかし、報道という観点から言えば、そこを強調する必要はあまりないはずだ。海外で活躍する日本人選手のインタビューが「カタカナ英語」で報道されるところを想像してみてほしい。「Aimu happi. Sank yu」なんてテロップがついていたら、どうだろう?
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「日本人選手が優勝!」と祝うのはアリ? ナシ?
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