若者が犠牲になった事件を報じるエクセルシオール紙
現在のメキシコは、米国を始め世界に向けての麻薬の供給量では最大規模の国となっている。
その関係からメキシコでは麻薬密売組織カルテルが横行し犯罪が年々増加している。そして、その犠牲となっているのが多くの若者である。
その要因としてメキシコ代表紙『
Excelsior』(4月29日付)は2つの点を挙げている。麻薬密売組織同士の争いに
未熟な若者が容易に巻き込まれるということと、麻薬を通して
犯罪組織が若者を魅了するだけの能力をもっているということだとしている。
同紙は、国家は麻薬とカルテルを取り締まるための戦いは熱心であるが、若者が暴力や犯罪に染まらないように彼らを保護して正しい教育を施すことに欠けていると指摘する。犯罪組織が蔓延れば、未熟な若者の周囲には麻薬や凶器などが容易に手の届く範囲に存在するようになる。そこから犯罪組織と容易に接触する機会が増え、また麻薬患者となってカルテルとの接触も増えて、それが何かの動機で殺害へと結びつくようになるのである。
米州人権委員会(CIDH)が2016年にまとめた報告書によると、18歳未満の若者3万人がカルテル組織に加わったと報告している。(参照:「
CONTRALÍNEA」)
いかに多くの若者が殺害され、またその数が年々増えているかということを示すのに、前述の『
Excelsior』紙がそれを詳細に説明している。それによると、2007年に15歳から24歳の若者が1785人殺害されているが、2016年には5240人にまで増えているのである。年齢を設定せずに同期間(2007年~2016年)に殺害された若者は、実に男性41296人、女性5445人にまでのぼるというのである。
2007年はフェリペ・カルデロン(当時)大統領がカルテルとの全面的な戦いを始めた年であった。
しかし、当時はまだしっかりした組織をもったカルテルは4つ――ティフアナ、シナロア、フアレス、ゴルフォ――だけであった。彼の任期が終えわる2012年は、カルテルの数は7つ――シナロア、ロスセタス、ティフアナ、フアレス、ベルトゥランレイバ、ゴルフォ、ミチョアカン――に増えていた。
その後、エンリケ・ペーニャ・ニエトが同年12月に大統領に就任してから9つに増え、そして今はそれが20のカルテルにまで増えているのである。増えた理由は、それまで存在していたカルテルの分派が大きくなって独立して一つのカルテルとなっていったのである。