自民党は前回同様、“ニンジン”をぶら下げて劣勢挽回をはかる?
4年前の沖縄県知事選で、辺野古新基地容認でカジノ誘致派の仲井真弘多知事(当時)を現地入りして支援した菅官房長官。公約撤回したことによる劣勢を挽回することはできなかったが、今回もカジノ誘致特需(関連のハコモノ建設急増)を”ニンジン”に、建設業界からの支援を引き出す可能性がある
4年前の沖縄県知事選でカジノ誘致派の仲井真弘多・元県知事を支援した菅義偉官房長が9月1日と2日、辺野古新基地容認の知事誕生に向けて現地に入り、地元経済人や業界団体に自公維推薦の佐喜眞淳・前宜野湾市長への支援要請をした。
県知事選を取材する地元記者はこう話す。
「4年前の県知事選でも、菅義偉官房長官や小泉進次郎氏ら大物議員が来沖、辺野古容認に公約撤回した仲井真氏へのテコ入れで、南北縦貫鉄道計画(那覇~名護)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)誘致支援などの“ニンジン”をぶら下げて劣勢挽回をはかりましたが、今回も同じ手法を使ってきます。
特に通常国会でカジノ実施法案が成立したことから、前回と同様、カジノを含むIR(統合型リゾート)誘致を目玉政策に掲げるのは確実。そして『佐喜眞知事誕生なら沖縄へのカジノ誘致が実現、ハコモノ建設ラッシュとなって儲かりますよ』と“ニンジン”をぶら下げ、建設業界をはじめ経済界からの支援を取りつけようとすることでしょう」
「カジノ候補地に内定」を匂わせて建設業界などへ支援を要請の可能性も
「大型MICE施設を国と連携して責任を持って推進」を明記した重点政策パンフが置かれていた佐喜眞淳氏の選挙事務所(那覇市内)。海外の大型MICEはカジノと併設されていることが多く、政府も沖縄の経済界もセットで推進する立場だ
実際、佐喜眞氏の「重点政策30」「7つの全力」には、「沖縄らしいエンターテイメント等の観光コンテンツ産業も開発・推進します」「大型MICE施設を国と連携して責任をもって推進」と書いてあった。
MICEとは、研修(Meeting)・招待旅行(Incentive tour)・国際会議(Convention)・展示会(Exhibition)のことだが、海外の大型MICEは収益性の高いカジノとセットのことが多く、政府も併設を想定している。
沖縄県商工会議所連合会も「IRはカジノだけでなく、MICEも含めた統合観光施設であり、雇用促進や地域産業に寄与すると信じている」と、政府と同じ立場。沖縄の大型MICE施設がカジノつきとなるのは確実であり、今回の沖縄県知事選はカジノ誘致も争点の一つであるのは間違いないのだ。
「地元には経済界を中心に『最初のカジノ候補地3か所には入らなくても、候補地を増やした第2次選考に入ることができる』という期待感があります。
多くの県民に反発を受けるので表だっては言わなくても、県内最大手の國場組など建設業界に対しては菅官房長官が内々に『沖縄のカジノ2次候補地内定』を匂わせ、“カジノ誘致特需”(工事急増)への期待感を高めて、佐喜眞氏支援を引き出すことは十分に考えられます」(地元記者)
安倍政権の得意技は、“争点隠し選挙”とステルス作戦だ。今年2月の名護市長選では、最大の争点の辺野古新基地建設には一切触れない街頭演説を徹底する一方、水面下では建設業界などあらゆる分野の企業や団体に支援を働きかけた。
今回の県知事選でも菅官房長官は街頭演説をせず、ひたすら地元経済人や業界団体幹部との非公開面談(密室談義)に徹する。「街頭演説で話すと票を減らす恐れのある『沖縄へのカジノ誘致内定」を伝えるためではなかったのか』との憶測も流れている。