第3の違いは、信用買い(カラ買い)、信用売り(カラ売り)は、6か月以内に決済をしなければならないことです。現物取引では1年でも10年でも、それ以上でも保有することができます。
この6か月の制約は、個人投資家にとってかなり厳しい足かせになることがあります。「安値で買ったと思っていた株が実は高値買いで、6か月経っても買値以下」なら赤字覚悟で損切しなければなりません。
第4の違いは、証券会社に預けた資金の最大3倍程度の運用ができることです。株式取引が「ハイリスク、ハイリターン」と言われる理由の一つに、自己資金の3倍の取引ができることが指摘できます。
現金1000万円を預ければ、その3倍の3000万円の運用が可能になります。たとえば現物取引で「1000万円で購入した株式が運よく上昇、数か月後に100万円の利益が得られた」という場合、信用取引ではその3倍の300万円の利益が得られます。
逆に株価が下がって現物株の売却損が100万円の場合、信用取引では300万円の売却損になります。
しかも現物株の場合は、株価が下がっても上昇するまで持ち続けることができるというメリットがあります。信用取引の場合、6か月後も300万円の損失を抱えたままなら、損切り(購入価格以下で売却)しなくてはなりません。その段階で300万円の赤字になります。
信用取引には、以上のように現物取引にはない4つの特徴があります。現物取引でも、必要に迫られ購入価格を大幅に下回ったまま換金(売却)すれば元本割れに陥ります。元本が保証される銀行預金と比べれば明らかにリスクはあります。
しかし現物株を短期で売買する場合のリスクは限定されます。株取引が「ハイリスク、ハイリターン」と言われるのは、もっぱら信用取引のことを指していると言ってよいでしょう。
具体的に見てみましょう。第1の特徴である「証券会社からお金や株式を借りる」という点。これには、当然金利がかかります。借りている期間が長くなれば長くなるほど金利が嵩(かさ)んできます。
30万~40万円で購入した株式を6か月ぎりぎりまで保有していると、金利だけで5000円を軽く超してしまいます。このリスクを避けるためには、売買期間をできるだけ短くしなければなりません。
信用取引の第2の特徴はカラ売りです。証券会社から借りた株式を市場で売り、期限内で買い戻し、返却する取引のどこにリスクがあるのでしょうか。
カラ売りのタイミングは、カラ売り対象に選んだ銘柄の株価がピークに近い状態に来た時です。過去の株価の推移や業績などを総合的に判断して「これ以上の上昇は期待できない、これからは下落に向かうに違いない」と考えた時です。
ある銘柄の株価が3000円でピークに近いと判断し、証券会社から100株借りてカラ売りしたとします。予想通り数日後に500円下落すれば、5万円の差益が得られます。1000円下落すれば10万円が得られます。
これはうまくいったケースです。予想が外れ、ピークと思った株価がピークではなく、さらに上昇を続けて3500円になれば5万円の損失、4000円まで上昇すれば10万円の損失になります。