バンコク駐在中に物件購入して不動産投資。しかしそんなに甘くない現実

意外と安くないタイの人気物件という誤算

 ところが、家賃と地価高騰が続くバンコクで不動産投資は無計画に手を出すと火傷をしてしまうと、不動産売買に詳しい人物A氏が言う。 「バンコク中心地は何年も地価高騰が続いています。そのため、運用に利用するには高すぎる状態になりました。投資で利益を出せるのは実はごく一部のエリアしかありません。それを仲介する人はあえて教えずに買わせようとしているのです」  不動産仲介業を営む複数の人に聞いたが、日本人がタイで部屋を賃貸に出して資産運用する場合、店子は日本人にしたほうがいいとされる。タイ人や外国人だと契約や文化の違いでトラブルも起こり、気軽に運用できない。日本人だと同じ背景を持ち、かつ大切に物件を扱う人が多く、手間をかけずに運用しやすい。しかし、そうなると日本人に人気の居住エリアは限られてくる。
タイで日本人が多い地域

「日系企業」ではなく「日本人居住者」が多いのはBTSプロンポン駅からエカマイ駅の3駅分。この辺りのコンドミニアムでも運用成功率は100%とは言えない

 アソークという多くの日系企業が事務所を構えるエリアがある。ここに最近新しいコンドミニアムが開発された。ここは超高級を謳っていることもあり、平米単価が30万バーツ(約100万円)になるという。それでもまだバンコクの最高値水準とは言えないが、屋台でなら1食が300円程度で済む国でこの単価は驚異的な価格である。これが単身者向けレベルの45㎡の部屋だと単純計算では1350万バーツ(約4600万円)となる。  ここまで高いとサラリーマンが投資できる額ではない。しかし問題はそこではなく、悪質な不動産仲介業者だと「運用利益が出る」と気軽に言ってくることに注意を払わなければならない。前出のA氏が言う。 「この物件だと家賃10万バーツ(約34万円)で運用できると悪質な業者は売り込むようですが、実は落とし穴があります。近辺に有名なホテルがサービスアパートを運営しているのですが、そこが60㎡で8万バーツ(約27万円)です。つまり、10万バーツだと最初からエリア相場が合っていないわけです」  サービスアパートとは部屋の掃除から洗濯などすべてが込みになったマンションやアパートだ。近くにそんな部屋があってはそもそも借り手がつかない。しかし、仲介者はそういう肝心な点を敢えて黙っているというわけだ。  賃貸不動産仲介業者に勤めるB氏からも同様の話が出てくる。 「最近増えているのが、高額でコンドミニアムを購入したけれど、借り手がみつからなくてうちに預けたいという人です。しかし、ある程度の利回りを目的に購入した不動産ですので、希望額がある。でも、それが相場に見合っていないのです」  ある程度の見込みを持って資産を投げ打ち購入しているため、一定のラインから家賃を下げることが気持ち的にできない。先のアソークの物件を本当に10万バーツで貸せるなら、実質的な利回りは6~7%ほど期待できるが、現実はそうは行かない。それを購入後に気がついても、株式やFXで損切りには勇気がいるのと同じで、家賃を下げるには気持ちが追いつかないのだ。B氏の経験では、10万バーツくらいで貸せると見込んで購入した物件の実際の相場が4.5万バーツ程度、つまり半額以下だったケースもある。
タイの建物

バンコクは地盤が緩く、建物も数年でひびが入ってしまうほどに沈む。劣化が激しく、また修繕も必要なため、利益がなお削られる

 今回の取材で唯一名前を出していいと言ってくれた賃貸不動産仲介業の「ディアライフ」社営業担当はバンコクにおける不動産の投資は難しいと言う。 「場所によっては利益も出るはずです。しかし、本当に儲かる物件はタイの富裕層などがすでに押さえていますから投資を成功させるのは難しいでしょう。そういった事情もあって、弊社では基本的には賃貸しか扱いません」
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