山口:上司の世代も、変わることには相当のエネルギーが必要なのではないですか。
朱:自分の経験と照らしあわせても、現在、30代前後の世代は、中国における大きな変化を体験しています。インターネット、SNSをはじめ技術革新も享受しています。変化を体験していない「95後」世代よりも、30代前後の世代の方が、変化に対する耐性は強いのです。私は、変われる方が変わればよいと思います。
山口:上司層が自己変革しようとする意欲は、私が中国でコーチング話法による巻き込み型リーダーシップの演習をしていても、それに対する貪欲さから実感しているところです。
朱:中国でもコーチングが浸透しつつありますが、なかには、逆コーチングを実施している上司がいます。「95後」世代をはじめ、その前後の若い部下から上司がコーチングしてもらうということを上司が望んで、部下に依頼しているのです。
山口:部下のことがわからない状況に直面して、「若手の言うことは理解できない」とか、「今の若い世代は宇宙人だ」などと言っている暇があったら、その若手に考え方を聞いたり、若手の考え方をコーチングしてもらったりして、相互理解を深めるということですね。
しかし、過保護であるとは言えませんか。
朱:その面は否定しません。ストレス耐性も低いです。加えて、「95後」世代は海外志向よりも、国内志向が強いです。大国となり成長を実現しているベンチャー企業が、ほとんど一夜にして巨額の富を得る「
一夜爆富」や、極めて短い期間に上場したり巨大企業に育ったりしている姿を目の当たりにし、自分の夢を実現できるかもしれないと思っているからです。
そうであれば、なおさら上司層は「95後」世代をサポートし、彼らの能力を生かしてあげたい。それが企業の成長や国の発展につながると思うのです。
<対談を終えて>
数年来、中国各地でリーダーシッププログラムを実施していると、国営/民営企業によらず、中国企業がトップダウンのリーダーシップから巻き込み型のリーダーシップへ変革しようとする強い意欲をひしひしと感じます。それは、「95後」世代が社会人になることを見越した、先進的な取り組みであるといえましょう。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第98回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある