アメリカとメキシコがあれほど難航していたNAFTA交渉見直しで大筋合意した背景

トランプ

geralt via pixabay(CC0 Public Domain)

 1994年1月に発効した北米自由貿易協定(NAFTA)はトランプ大統領が選挙戦中から米国が結んだ最悪の貿易協定だとして破棄するか交渉の見直しを公約していた。  そんなNAFTAについての見直しだが、2017年8月から米国、カナダ、メキシコの間で始まった交渉は紆余曲折を経て、ついに8月27日に米国とメキシコの2国間で合意に達した。  合意の手前、最後の5週間はメキシコの代表団は交渉の詰めの解決にワシントンとメキシコシティーの往復を繰り替えしていたという。同期間カナダの代表は交渉には不在であった。

あれほど難航していたのになぜ「合意」に至った?

 合意に至る道を容易にしたのは次のような背景があった。  メキシコにとって輸出の8割は米国向けである。そのため、トランプからの一方的な見直し案が出されたとしても、この協定を内心破棄できないという状況にあった。破棄すれば景気は大きく後退し、雇用の喪失も深刻になるからだ。その為、特にトランプ大統領が要求していた自動車部門において譲歩することにしたのであった。  メキシコ代表団にエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領が米国との交渉を考慮して財務相から外相に移したルイス・ビデガライが加わっていたというのも交渉の進展を容易にさせたという。彼はペーニャ・ニエトがメキシコ州知事だった時から閣僚に加わっていた人物で大統領の腹心的存在である。そして、トランプ大統領が全幅の信頼を寄せているジャレッド・クシュナーとは二人がウォール街で活躍していた時から親交があるという間柄なのである。  トランプ大統領が2016年8月末にメキシコを訪問したのもこの2人――ビデガライとクシュナーが発案して実現させたものであった。移民問題で当時ぎくしゃくしていたトランプとペーニャ・ニエトとの関係改善を図ったものであった。  更に、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(通称アムロ)が次期大統領になることが決まった時点から、アムロが指名したヘスス・セアダも代表団に加わった。だから、アムロもこの合意内容に賛成している。また、トランプ大統領もアムロに好感を持っていることを表明している。(参照:「La Sillarota」、「El Pais」)
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メキシコを切れないアメリカ側の事情
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