韓国の性暴力被害相談所の職員は、今回の判決に警鐘を鳴らす。
「裁判部は加害者に強制力があることを指摘していない。加害者側の証言や解釈をすべて鵜呑みにし、それを被害者側の『肯定の証拠』として捉えている」、「堂々と被害を告白することが被害者らしくないという視線と基準、被害者だけが疑わしいという偏見は、今後どのような性暴力も有罪とされない前例となってしまう」と主張した。
あらゆるリスクを背負ってまで被害を告発したことが、この無罪判決によって、今後単なる「言い損」になる危険性もはらんでいる。
デモ当日、「沈黙は私を守ってくれない」、「Me Tooは終わらない」という叫び声は、2時間近く響いていた。
今年6月28日、BBCは日本で強姦されたと被害告発した伊藤詩織さんを取材した「Japan’s Secret Shame(日本の秘められた恥)」が英国内で放送した。
伊藤さんは2015年4月に著名ジャーナリストの山口敬之氏に強姦されたと、警察に被害届を出した。最初の記者会見を開いたのは、2年後の2017年5月。山口氏の逮捕令状が出たにもかかわらず逮捕が見送られ、証拠不十分として不起訴処分となったことへの不服を申し立てる内容であった。
番組ではその会見以降、伊藤氏がSNSなどで激しい中傷や非難を受け続けていることなども紹介している。
番組では山口氏を擁護する人物として、自民党の杉田水脈議員を取材している様子が映された。先日、「子供を作らないLGBTカップルは『生産性』がない」と発言して物議をかもした、あの杉田議員である。
杉田議員は、伊藤氏に「女として落ち度があった」と語り、ネット座談会などでも強く批判している。
「男性の前でそれだけ(お酒を)飲んで、記憶をなくして」、「社会に出てきて女性として働いているのであれば、嫌な人からも声をかけられるし、それをきっちり断るのもスキルの一つ」と杉田議員は話している。
伊藤氏は番組内ですべての批判的な意見も受け止めた上で、こう語っている。「何か動きを起こせば波が起こる。(中略)良い波も悪い波もくるが、黙っているよりはずっといい。」
性的被害を受けてなお求められる、「被害者らしさ」や「女として」の所作。「Me Too」運動がここまで爆発的に広まったのは、そうした「被害者らしさ」や「女として」の所作の殻を破り、一人の人間として権利を主張したからではないか。
「沈黙は、私を守ってくれない」。
勇敢に前を向いて戦ったあとに、希望あふれる未来をつかんでほしい。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>