正体を隠して活動する日本会議の「カルト性」

「日本会議」の名を出さずに後援を申請していた!?

 いわずもがな、日本会議は政治団体ではない。日本会議は法的には任意団体であり、一般的な言葉でいえば「市民運動グループ」「活動家の集団」だ。日本会議の法人資格から考えれば、日本会議のイベントに各省庁が後援を出すことはなんら差し支えないとはえいる。ただしこれは原理原則の話。「どこぞの市民グループが主催する前川元文科省事務次官の講演会にも、申請がありさえすれば、どの役所も後援する」ということは事実上ないわけで、後援実施の可否は「申請がありその申請書の内容に問題がなければ原則的に全てのイベントを後援する」ではなく、「申請があれば、申請者の日頃の主張や活動を勘案してから決断する」という判断で動いているのは明らかだ。  つまり、経済産業省も外務省も文科省も、「申請者の日頃の言動、活動内容をみて後援するに差し支えない」という判断を下したことになる。  日本会議が日頃から改憲を主張し、これまでも「教育基本法改正運動」や「国旗国歌法制定運動」「元号法制定運動」などで実績をあげている活動家グループであることは、すぐ調べればわかる。拙著『日本会議の研究』刊行以降、彼らの実態も様々なメディアで報じられているわけで、役所がそれを知らないはずもない。となると、「役所は日本会議がそうした活動家の集団であることを知って後援したのか?」という疑問がわいてくるのが自然だろう。  そこで、後援の名義が出ている、経済産業省 外務省 文科省それぞれに、「第3回アジア地方議員フォーラム日本大会を後援したのは事実か?」「この会合が実質的に日本会議の主催であることを知っていたのか?」について問い合わせてみた。  経済産業省と外務省からは未だ返答はないものの、文科省の担当者は電話による取材で後援に至った経緯を素直に解説してくれた。  文科省の担当者によると、この会合に対する後援申請は昨年末に出されたのだという。申請者の名義は「第3回アジア地方議員フォーラム日本大会実行委員会」。連絡先の電話番号や住所は、同委員会会長の松田良昭・神奈川県議のもので、すべて神奈川県内のものだったという。  昨年末の申請書受理後、実行員会の担当者と称する人物と何度かやり取りしたが、文科省の担当者によるとこの実行委員会側の担当者は松田県議の秘書と思しき人物であったらしい。つまり、後援の申請段階では、日本会議の会合である旨の情報が添えられていなかったということになる。  文科省としては、神奈川県議からの申請をうけあくまでも「アジアの地方議員と日本の地方議員の交流」とのことで後援の実施を判断した格好だ。 「パンフレットの表紙には、“日本会議地方議員連盟設立10周年記念企画”と大書きしてあるが、この情報さえ申請時にはなかったのか?」と重ねて確認したが、文科省の担当者は「申請書を見る限りその記載はない」と断言する。「となると、日本会議は御省を騙したということになりますね?」と水を向けると、文科省の担当者氏は「騙したかどうかはあれですけど、そういう企画であれば、事前に教えて欲しかったなというのはあります」と素直に述懐した。  この文科省の見解は当然だろう。行政機関が活動家グループのイベントを後援するとは考えがたく、日本会議のイベントであると事前に申請があれば後援として名義を出すはずがない。  一方の日本会議の見解を問うため、こちらも電話による取材を実施したが、「菅野完です」と名乗ったところ、「あなたに答えることはありません」と一方的に電話を切られた。  先述したとおり、経済産業省と外務省からは未だ返答はないものの、おそらく後援の申請をする書面の内容は文科省に出されたものと大差はないはずだ。日本会議の名前を伏せて申請をしている以上、各省庁が後援名義を出すとの判断を下したのも無理はない。  となると、問題は役所の判断にあるのではなく、日本会議がまたぞろ正体を隠して活動していることに絞られる。  そしてこの「正体隠し」こそが、日本会議がカルトたる所以であり、社会として日本会議を監視しなければいけない理由なのだ。
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正体を隠して活動するのはカルトの手法
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