「50年間の賃料収入でプラス47億円になる」と区は言うが、実際はマイナス97億円
企業のために165億円もの税金を吐き出す大田区。問題は、これが区にとってプラスに転じるかどうかということだ。
空港まちづくり課は「企業は50年間の定期借地権を設定しますが、その50年間で区には212億円の賃料が入ります」と説明する。
それだけで計算をすると212-165=47億円が区に入ることになる。ところがさらに調べてみると、区は跡地に建設される施設で4000㎡を「羽田みらい株式会社」から借りて、区内のモノづくり技術を世界に発信する事業を行うという。その賃料、月2400万円。50年で144億円だ。ということは、47-144=マイナス97億円で赤字となるということだ。
この点を空港まちづくり課に問うと、担当者は「様々な事業を行うことで、区への経済波及効果があることを理解してください」と説明するだけで、具体的な数字での波及効果の説明はなかった。
なぜ大田区は、国の9分の1という破格の安値で貸すのか!?
さらに奈須議員は、区が非常に安く貸すことに疑問を呈する。
「50年で212億円の賃料収入は、1㎡あたりで計算すると月に約600円です。ところが、国有地である第2ゾーンでは、国は、4.3haを住友不動産などに年27億円で貸します。計算すると、1㎡あたり月5200円ですよ。9倍も違う。なぜ区がここまで安く貸すのかを明らかにしたい」
第2ゾーンの場合は3者による入札で、落札額から年27億円との数字がはじき出されたので、この点で怪しい点はない。
だが、第1ゾーンの第一期工事における1㎡あたり月600円という賃料設定の根拠は何か。空港まちづくり課は、理由のひとつとして「企業に50年間活動を維持してもらうため(に安くした)」というが、大盤振る舞いだと思うのは筆者だけではないはずだ。
じつはこの問題の根深いところは、まだ区民の多くが知らないということである。165億円あったら、保育に教育施設の充実に高齢者福祉にどれだけの活用ができることだろう。
羽田空港跡地利用にまつわる不可解な動き。今後も、この計画を知ることになる大田区民の反応をとらえつつ、取材を進めていくつもりだ。
<取材・文・撮影/樫田秀樹 写真/時事通信社>