日本の住宅は「エアコンの効きが悪い」!? その理由とは

猛暑を「ガマンでしのぐ」日本の文化が熱中症対策の遅れに

温度計「命に危険を及ぼすレベルで、災害と認識」とした気象庁の言葉どおり、日本列島を異常な猛暑が襲っている。埼玉県熊谷市では観測史上最高の41.1℃(7月23日)を記録したのをはじめ、各地で40℃超えが続出した。  さらにやっかいなことは、これが今年だけの異常現象ではない点だ。気象庁が「(この猛暑は)将来も増えると予測されている」と説明するように、気候変動の影響によって来年以降もこのような猛暑になる可能性は十分ある。これから暑さ対策を検討する際には一時しのぎではなく、長期的な視点で挑む必要がありそうだ。  しかし、日本ではこれまで「暑さや寒さ」に対してガマンでしのごうという精神論が根強く、根本的な対策が遅れている。例えば、熱中症による救急搬送の数は昨年のおよそ倍に増えている(※1)。その約4割は家庭内で倒れているが、ほとんどは「電気代がもったいないから」とエアコンを使用しなかった高齢者だ。ガマンの文化がもたらしている悲劇と言える。 ※1…消防庁によると、2018年の熱中症による救急搬送者数は全国で7万1266人(4月30日〜8月5日)。昨年の同期間の3万7032人のおよそ倍になる。住居内で倒れた人の割合は39.4%、65歳以上の高齢者が45%を占めている。

36℃でも授業を続ける日本、27℃を越えると臨時休校になるドイツ

救急車 また、公立の小中学校のエアコン設置率が50%を切っていることが話題になったが(※2)、猛暑の教室で学んだところで、子どもの体調や学力に悪影響が出るばかりだ。これも自治体の予算がないことを理由に、子どもたちに暑さをガマンさせてきた例のひとつだろう。 ※2…文部科学省の2017年の調査によると、全国の公立小中学校のエアコン設置率は49.6%。また、都道府県による格差も大きい。東京都の設置率が100%に対して、東京より最高気温の高い愛媛県(5.9%)や奈良県(7.4%)などの設置率の低さが際立っている。  欧州では「暑さ寒さは人権問題」という意識が浸透していて、例えばドイツの小中学校では、州ごとに温度規定が設けられている。室温がおおむね27~30℃以上になれば、子どもたちの体調や授業への集中度を考慮して、校長が臨時休校の判断をくだすことができる。  最近では、ドイツでも温暖化の影響で教室にエアコンを設置するケースも増えてきたが、日本の子どもたちが36℃になっても授業を受けていることを考えると、雲泥の差がある。日本でも、これまでの「なんとかガマンでしのげる暑さ」とはレベルの違う段階に入ったことを認識して、早急に対策をとらなければならない。
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「断熱」されていない日本の家
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