退職後500万円の負けを経て、元日経新聞記者が獲得した着実に利益を出すための教訓とは?

扱う銘柄が多いと、目配りが低下してしまう

オンライントレード 1人の人間が多くの銘柄の株価情報を把握し、売買し、利益を出すのは不可能に近いからです。多少経験を積んできた私でも、最大30銘柄をカバーするのがやっとです。  購入する銘柄の数年間の価格変動、直近の足元の変化、年間・月間の高値と安値、変動幅、季節性、決算時期、最近数年の配当実績、来期見通しなどをしっかり把握しなければなりません。そのうえで、今が安値で購入のチャンスと判断すれば踏み切ります。  繰り返しになりますが、取り扱う銘柄が多すぎると、目配りがおろそかになってしまいます。最初の半年から1年は銘柄を数本に絞り込んで、売買を繰り返しながら相場観を養うぐらいの慎重さと余裕が必要です。その間に残りの300万円で購入する新規の候補を数銘柄選び、事前に研究しておきます。

現物株も長期保有せず、短期売買に徹する

2011年3月の福島原発事故で東京電力の株価は暴落。事故前の2009年初めには3070円していたが、2011年6月には148円まで下落。株価の価値は95%近くまで縮小した

「石橋攻略」では、現物取引で購入した銘柄も長期保有せず、短期売買を繰り返すことで利益を重ねていきます。つまり一定の利益が確保できれば、たとえ昨日買った株でも翌日には売却する。価格が下がった段階でまた同じ銘柄を再度購入する。この動作を繰り返します。  後で説明する信用取引の売買手法を、現物株に応用したものです。これも「石橋攻略」の大きな特徴の一つです。ネット株取引を始めた頃、信用取引は短期売買、現物取引は比較的長期売買で対応してきました。  ネットトレード(取引)が普及するまでは、現物株については長期保有が一般的だったと思います。高度成長期の株式投資は、優良銘柄を選んでじっと持ち続ける戦略が効果的でした。ホンダ、ソニー、京セラなど新興企業は積極的に増資を続け、業績を伸ばしてきました。  この間、株主にはさまざまな優遇措置を与えてきました。無償増資、株主割当増資などを通して株主を優遇してきました。株価も上昇を続け、配当金も毎年のように増えたため、10年も持ち続ければひと財産できました。  新興企業でなくても、東京電力などの老舗企業で、経営が安定し配当金も大きい企業の株式は、資産家の父親が娘の嫁入りに当たって、「万一のための保険金」として、そっと持たせるのが父親の甲斐性とされた時代もありました。優良な現物株は一生持ち続ける価値があると考えられていたわけです。
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長期保有のメリットが薄れる時代
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