そんな中で今は経営責任者が世代交代をし始めていて、ビジネス展開が変わりつつある。例えば大手金行のひとつ「和成興大金行」は資産運用のための新サービスを数年前から提供している。これはオンラインやATMのような無人機で純金をデータ上で購入させるシステムだ。現物は金行が預かり、バンコクにいなくても「金」を運用できるようにした。
「和成興大金行」本社にあるATM型の金投資用の無人機
同行ではネットに疎い人のために銀行のような窓口も開設し、そこで投資の申し込みをしたり、ネットで買った現物を受け取ったりできる。ただ、街が高齢化しているからか、待合室は近所の老人の憩いの場になっているが。それでもその老人らは旧友らとエアコンの効いた待合室で談笑を楽しみながら、設置された画面に映るリアルタイムの相場変動を横目で見ていた。その目つきはやはり華僑らしい真剣さがあった。
ちなみに筆者はタイ人妻と結婚するとき、まだ結婚指輪は強制的に金製品を選択させられる時代だった。その後マンションの頭金支払いなどでどうしても資金が足りず、相場が1.5倍くらいになっていたことで結婚指輪を売り払ってしまった。妻には怒られるかと思ったが、こういった使い方もまたタイでは正しい金の運用法だったらしく、なにも言われなかった。
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NatureNENEAM)>
たかだたねおみ●タイ在住のライター。6月17日に近著『
バンコクアソビ』(イースト・プレス)が発売