和歌山市長選で、カジノの“争点隠し”を狙う現職・尾花まさひろ候補を、「誘致反対」の島くみこ候補が猛追

現職市長支援の有力者たちを直撃するも、カジノに関してはまったく答えず

二階俊樹氏

和歌山市長が告示された22日の現職候補の出陣式に、二階俊博幹事長の代理として出席した長男の二階俊樹氏(黒いスーツの男性)。直撃すると、「カジノ誘致はやっていない」と否定した

 だからこそ、尾花陣営は市民の拒絶反応が強いカジノにまったく触れない“争点隠し選挙”をしているともいえる。尾花氏の出陣式の後、二階幹事長の代理として出席した長男の俊樹氏を直撃した。 ――二階幹事長は(市長選について)どうおっしゃっていましたか。 二階俊樹氏:「一期目も私たちは尾花市長を応援した。その方針は全く変わらない。引き続き、尾花市長を応援します」と。 ――カジノは市長選の争点にならないのですか。二階先生も熱心に(和歌山市への誘致を)やっていますが。 二階俊樹氏:やっていませんから。勝手なことを言ってもらったら困る。うちはやっていない。  さらに、和歌山市へのカジノ誘致に熱心な仁坂知事にも聞いてみた。 ――カジノ、IRは、和歌山市長選の大きな争点にならないのですか? 仁坂知事:あれは僕の仕事。(和歌山市長選には)関係ない。和歌山市役所はあまり関係がない。 ――尾花市長は、カジノは「外国人専用」と言っています。「日本人も入場可能」という知事と食違いがありますが。 仁坂知事:そのうち、そのうち。こんな暑いところで、そんな話はできない! ――和歌山市長は(カジノ誘致に)関係ないのですか。 仁坂知事:関係ない。  この後、「カジノで和歌山市の治安が悪化する可能性があると思いますか」「IR内の囲い込みで周りのホテルやレストランが潰れてしまう可能性はないでしょうか」などと聞いたが、仁坂知事は街宣車に乗り込んだ尾花氏に手を振るだけで、質問には一言も答えなかった。

カジノ実施法案成立後、初の誘致自治体の首長選挙に注目

和歌山マリーナ

和歌山氏へのカジノ誘致候補地である「和歌山マリーナシティ」。すでに遊園地やホテルがあるというのが“売り”だが、地元推進派の門博文衆院議員はそこでホテルを経営する「和歌山マリーナシティ株式会社」の元取締役

 カジノ候補地の人工島・和歌山マリーナシティでホテルを経営する、「和歌山マリーナシティ株式会社」の取締役だった門博文・衆院議員にも聞いてみた。 ――カジノは和歌山市長選の争点にならないのでしょうか。 門議員:相手候補は争点にしたいのではないか。でも、市民の方の関心は高くないと思う。『反対』と言っている人たちが関心を高くしようとしているだけ。 ――IR周辺の商業施設が潰れるという米国の事例があり、地域経済が衰退する恐れがあるのではないでしょうか。 門議員:よそで起こったことが日本で起こるとは限らないですよね。まあ、カジノ先進地(シンガポールやマカオなど)を見ましょうよ。見ないでお互い話をしても仕方がない。  二階幹事長の地元の県庁所在地である和歌山市長選で、カジノ誘致に対する民意がどう結果に反映されるのか。尾花陣営が争点隠し選挙で逃げ切るのか、それとも島陣営が争点化に成功して善戦、あるいは奇跡の逆転勝利をするのか否かが注目される。  通常国会最終盤でカジノ実施法案は成立したものの、誘致には地方自治体の賛成が必要だ。法案成立後、初めての誘致自治体のトップを決める和歌山市長選は、他の誘致自治体の首長選や来年春の統一地方選でのカジノ賛成議員(自公維など)の当落を占う意味もあわせ持つ。7月29日投開票の和歌山市長選の結果から目が離せない。 <取材・文・撮影/横田一> ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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