和歌山市長選で、カジノの“争点隠し”を狙う現職・尾花まさひろ候補を、「誘致反対」の島くみこ候補が猛追

カジノ反対派支援の山本太郎議員「カジノ周辺にある商売がダメになってしまう」

島くみこ候補

カジノ誘致反対を主張する島くみこ候補(右)。左は応援に駆けつけた自由党の山本太郎参院議員

 一方の少数野党が支援する島候補は、第一声で「市民は(カジノを含むIRの)施設がほしいとは言っていないが、県と市は計画を進めている。ギャンブル依存症対策は十分だと実証されていない。IR誘致にはきっぱり反対していく」と明言した。  告示日の22日夕方には、自由党の山本太郎参院議員と福島瑞穂参院議員(社民党)と宮本岳衆院議員(共産党)がJR和歌山駅前に駆けつけ、そろって街頭演説をした。そして「カジノ反対」のプラカードが掲げられるなか、「原発を拒否したのが和歌山県。同じようにカジノから和歌山を守りましょう」(福島氏)と訴えた。  3人の応援弁士で山本太郎議員は一足早く駅前に来て島候補との“プレ街宣”に臨み、地元商業関係者に悪影響を及ぼすマイナス面を訴えた。 「カジノで問題になっているのは何か。『カジノと(IR施設内の)カジノの近くにある施設にお客さんが集中してしまって、カジノの周辺にある商売がダメになってしまう』ということが多々言われていることなのです。  和歌山の場合、(誘致候補地の)この『(和歌山)マリーナシテイ』にできたとしたら、マリーナシテイにお客さんは来るかもしれないけれども、その周辺の和歌山市の商売は厳しい状態に置かれる可能性が高まるのです」  この地域経済衰退現象について、カジノ現地調査をしてきた静岡大学の鳥畑与一教授は、こう説明する。 「IRはカジノの収益で施設内のホテルやレストランなどの値引きサービスで客を囲い込む結果、地域経済が衰退します。米国のアトランティクシティでは、IR周辺に潰れたホテルやレストランだらけ。カジノの儲けで値引きサービスをするIRとは、まともな競争ができないのです」  カジノには「ギャンブル依存症患者が増える」「治安が悪化する」などのマイナス面が指摘されているが、それに加えて「地域経済が衰退する」というマイナス面を反対派は主張していた。

カジノが争点になった小樽市長選では、推進派の現職市長が敗れる“番狂わせ”

 3人の国会議員揃い踏みの街宣後、島候補に手応えを聞くと、「カジノ誘致反対を訴えた時の反応がすごくいい。『初めて知った。阻止して欲しい』と励まされることもあります」と猛追への自信を見せた。  実は、2015年4月の小樽市長選でカジノ誘致反対の新人・森井秀明・元市議が、自民・公明・民主・連合小樽・小樽商工会議所が支援する、カジノ賛成の現職・中松義治市長(当時)の再選を阻んだ。カジノをめぐって、大政党と連合が推す現職市長が敗れるという番狂わせが起きていたのだ。  とすれば、原発再稼働の是非を問うた新潟県知事選や「カジノ賛成の現職市長」対「カジノ反対の新人候補」の構図となった小樽市長選と同様、和歌山市長選でも「カジノ誘致イエスかノーか」が大きな争点になれば、支援政党の基礎票の足し算とはまったく違う結果となっても不思議ではない。  4年前の和歌山市長選の投票率は約3割だが、前回は棄権した有権者の一定割合が「和歌山にカジノはいらない」と危機感を募らせて投票場に足を運べば、奇跡の逆転勝利の可能性も出てくるのだ。
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現職市長サイドは「争点隠し」か
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