「子育ては女の役目」という固定観念は少子化対策の足かせ。日本以上に深刻な少子化に悩む韓国で上がる声

aijiro / PIXTA(ピクスタ)

 自民党の二階俊博幹事長が都内の講演で少子化問題に触れた際、「子供を産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」、「子供をたくさん産み、国が栄え、発展していく方向にしよう」などと発言した。  これだけではない。自民党内の少子化をめぐる失言は、ここ最近、後を絶たない。  今年の5月にも加藤寛治衆院議員が派閥会合の場で「結婚披露宴に出席する際は、必ず3人以上の子どもを産み育てるようお願い」していると発言。世論から猛烈な批判を浴び、謝罪する事態にまで発展した。  日本の2017年の年間出生数は94万1,000人(推計値)。  これは統計が始まった1899年以降、最も少ない値である。2016年に史上初めて100万人を割り込む97万6,978人となり、2017年はそこからさらに約3万6,000人の減少となった。日本の少子化の波は止まらない。  しかし、日本よりもさらに少子化が深刻化している国がある。お隣、韓国だ。

前年比1割近く出生数が減っている韓国

 韓国で今年1月~4月までに生まれた子供は、11万7300人。前年と比べると、すでに9.1%も減少している。  昨年、韓国で生まれた子どもの数が初めて40万人を下回り、合計特殊出生率が過去最低の1.05人を記録。これまでの最低値だった2005年の1.08人を下回った。  合計特殊出生率とは、「一人の女性が一生のうちに出産する子供の平均数」を意味する。  2005年に合計特殊出生率がワーストを記録して以来、政府の積極的な少子化対策などが功をなし、やや改善傾向にあったが、しかし1.1~1.2人台を行き来していたにすぎなかった。  単純計算でこの値が2.0なら、夫婦2人から子供が2人生まれるということなので、その世代の人口は維持されることになる。しかし、今や韓国の出生率は、現人口を維持できる数値の半分まで下がっている。(参照:Joins)  また、韓国の少子化委員会は、このような傾向が続けば、2022年までに出生児数が20万人台に落ち込み、合計特殊出生率も1.0人を下回ると予想した。  国連人口基金(UNFPA)の資料によると、調査対象およそ200カ国のうち、昨年の出生率が1.0以下だった国はなく、韓国が世界唯一の超少子化国家となる。  かつて出生率が1.0未満を経験した国・地域としては台湾・シンガポール・香港などもあるが、相対的に人口が少なく、現在は出生率1.2~1.3のレベルを維持している。

韓国の少子化対策は子育てに注目する方向へ

 これを受けて韓国政府は大統領直属の少子化高齢社会委員会を立ち上げ対策を協議。対策案を発表した。  従来の少子化対策は目的を「出生率の向上」とし、結婚、妊娠、出産の段階を重視していた。  しかし、今回発表された政策では、「子育て」に着目。少子化が加速する背景に、長時間勤務しなければならない労働環境や、出産による男女間の雇用不平等、また、女性だけが育児を担当するいわゆる「ワンオペ育児」の現実を指摘した。  新たに8千800億ウォン(約873億円)あまりの財源を追加投入し、出産過程だけでなく、夫婦の労働環境や子供の医療費負担の緩和、教育費の負担軽減、住居費のサポートなど、生活全般ともいえるものまで改善対策を設ける方針だ。
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「子育て」支援に注目はしたが……
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