アフガニスタンで奇跡的な“3日間の平和”が実現、市民主導で平和集会が開催される

タリバン兵「立場は違っても同じアフガン人で兄弟だ」

停戦を喜び、「平和」の文字を掲げるメムラ村の子どもたち

停戦を喜び、「平和」の文字を掲げるメムラ村の子供たち

 6月16日午後に集会は始まり、三者それぞれが意見を述べた。市民代表の部族長とサビルラ氏が「この画期的な停戦の機会を逃したくない。人々は停戦を延長することを望んでいる」と訴えると、タリバン側は「アフガニスタンから米軍が撤退することが最大の望みだ」と主張する。  あるタリバン兵が経験談を披露した。 「私の近所の家族は父親が警察官だったが、タリバン兵に殺された。警察とタリバン、立場は違っても同じアフガン人で兄弟だ。私は孤児となった子供たちに、毎月お金を援助している」  それに対して、政府関係者らは「同じイスラム教徒のタリバンと政府軍が闘うことには意味がない」と応じ、「我々が和解して一つになれば、第三国が介入する理由がなくなるだろう。そのために協力したい」と平和への意欲を示した。  成功裏に終わった平和集会。タリバン側と政府側は「共に停戦の延長を望む」ことと、「タリバンが制圧している地域を、政府が尊重する」という合意に至った。さらに、この合意事項をナンガルハル県のハヤトラ知事に申し入れるとした。

停戦の延長と、戦いが続く要因である第三国からの介入をなくすことに賛成する

メムラ村青年グループは、ナンガルハル県知事へ停戦延長の申し入れを行った

メムラ村青年グループは、ナンガルハル県知事へ停戦延長の申し入れを行った

 停戦期間の最終日となる翌17日、メムラ村のあるホギャニ郡から1500人もの人々が車に乗り合わせて県都のジャララバードへ向かった。ハヤトラ県知事への停戦延長の申し入れに立ち会うためだ。メムラ村青年グループは名簿を準備したり、会場設営したりと実務に奔走。  市民と部族長、県知事と議会代表のほか、県知事が招待したタリバン代表者も加わり、大きな政府会議場に一堂が集結した。代表者らは異口同音に「停戦の延長と、戦いが続く要因である第三国からの介入をなくすことに賛成する」との意思を表明した。  最後にハヤトラ県知事は「44年間生きてきて、これほど嬉しかったことはない。停戦延長のためのどんな努力もいとわない。また、市民の平和活動を全面的に支援する」と隣りに座るタリバン代表者に自分のターバンを手渡した。会場は大きな拍手に包まれた。  同じ頃、アフガニスタンのガニー大統領が、政府として停戦の延長を宣言。「99%以上の人がイスラム教徒のこの国で、ムスリム同士が戦うことは無駄なことだ。停戦の延長を行う」と発表した。
次のページ 
つかの間の平和に終止符
1
2
3