「ただ純粋なまでに悪」。悪は暴力団だけではない
<不動産執行人は見た5>
「ヤクザの手口」「ヤクザの資金源」「ヤクザのフロント企業」。
褒められたものではない稼ぎ方をしている企業や組織を見つけると、必ずと言って良いほど、このような暴力的な言葉が投げかけられる。
正直、本物のヤクザさんも「いやいや、それ俺たち関係ねぇし……」と思っている案件も多々あることだろう。
不動産執行の現場に携わっていると、指定暴力団との繋がりなど全く無いながらも、“ただ純粋なまでに悪徳”という業者に出会う。その悪徳の方向性も多種多様だ。
今回はそんな一例をご紹介したい。
片田舎の最寄り駅から徒歩30分はかかろうかという敷地面積の広い物件。
車社会とも言える地域ではありながらも、なぜか駐車場は無い。庭には手入れの行き届かない草木が生い茂り、近隣トラブルを抱えているのか隣家が当該物件より全く見えないよう屋根の高さまである目隠しフェンスを立てている。
問題の債務者とは全く連絡が取れない状況のため、立ち会ったのは債務者の弟夫婦だった。
聞いてようやく状況がわかったのだが、債務者は知的障害を抱えており養護学校での中学校教育を終えた後は両親とともに暮らしていた。
裕福な家庭だったようでその後の暮らしも安定していたのだが、数年前に両親が急死。子どもたちには多額の財産が残されることになった。
そのまま、親族での会議や相談などは無く、多額の財産と知的障害者男性の一人暮らしという極めて不安な状況が構築されることになってしまったのだ。
このような情報をいち早くキャッチできる悪徳業者の情報網を、行政も少しは学ぶべきなのかもしれない。
まずやってきたのは訪問販売業者だ。債務者は幼少期の体験から「話の内容をわかっていない」「物事を知らない」と人から思われることを極度に嫌っていたようで、これが業者に見抜かれ巧みに利用されることになる。
当初はくだらないものを高額でかわされるというところからスタートし、徐々にボッタクリはエスカレート。最終的には1箱250万円というプーアル茶が紹介され、あろうことか債務者はこれを2箱も買わされることになった。