実はアジア3位のビール消費量。意外なビール大国「ベトナム」の独特なビール文化

「ビア・ホイ」も復活の兆し

 また面白いことに、文化的な背景やベトナム戦争のころは別の国だったこともあってか南部では生ビール屋台はほとんど見かけない。安宿街のブイビエンに唯一ビア・トゥオイの看板を掲げる店があるが、わざとなのか、供給量が少ないのか、1週間に1日程度しか生ビールがないほどだ。2018年3月にはもう1軒、生ビールを売りにした店が同じ通りにできたが、どちらかというと地ビールの生で、3万ドン(約144円)と高額であり、元来のビア・トゥオイとはかけ離れている。

ホイアンの飲食店には確かに看板に3000ドンとあった

 中部でも生ビールはあまり見かけないが、古都ホイアン(ダナンから車で40分ほど南下した場所にある街)ではフレッシュビールという名称で生ビールを扱っていた。しかも価格が3000ドン(約14円)とベトナム最安値水準。後日、南部で知り合った中部出身のベトナム人に話しても「それはキミの見間違いではないか?」と、価格設定を信じてもらえなかった。それほど安い。筆者が入った店がその料金で、ほかの飲食店では同じ3000ドンで、2杯か3杯注文すると1杯が無料といたサービスもあるようで、屋台系の生ビールはホイアンが最安値だと推測する。

ホイアンで飲んだ14円の生ビール。安いのにちゃんと冷えてた

 それだけ安いのでさぞ怪しいものが来るだろうと思えば、ちゃんとしたジョッキで、しかも冷たいビールが来た。ハノイのビア・ホイはプラスチックのカップに常温のものが来ることもあるので、ホイアンはレベルも高い。  これだけおもしろいベトナムの生ビールも若者には相手にされず衰退しつつある。しかし、ハノイの在住日本人からの情報では、今改めてビア・ホイが復活しつつあるという情報が入った。 「売価が安いということは原価も安いわけですよ。そこに目をつけた企業が、自社の大型飲食店などで採用し始めています。焼肉の食べ放題店などの飲み放題ビールにビア・ホイを使うんです。ただ、たくさんの客を収容する大型店ですので、中心部ではなく郊外で展開していますが」  その日本人曰く、近くビア・ホイが見直されて、また旧市街辺りにビア・ホイ屋台が増えるのでは、という。いずれにしても、ベトナムはビールがおもしろいのだ。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)> たかだたねおみ●タイ在住のライター。6月17日に近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)が刊行予定
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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