大阪の熾烈な百貨店競争に「庶民派百貨店」はどう挑む?――全面リニューアルした「阪神梅田本店」を徹底解剖(2)

阪急、阪神とともに「梅田全体の価値向上」に

 阪神電鉄は現在、旧・阪神本店西側部分の建替工事を進めており、今回開業した部分と合わせて2022年春に「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」として全館グランドオープンする予定だ。なお、百貨店部分は2021年秋に全面開業し、高層階はオフィスとなる。  さらに、2022年には阪急うめだ本店が入っている梅田阪急ビルを「大阪梅田ツインタワーズ・ノース」に改称、両ビルを「大阪梅田ツインタワーズ」と総称する予定で、阪急・阪神の更なる連携が図られることになる。  H2Oリテイリング広報によると、阪急うめだ本店では、阪神との棲み分けを図るべく今後さらなる「非日常性」「ラグジュアリー性」の提案、高感度ファッションの充実、そしてインバウンド需要の取り組みを目指すとしている。とくに、催事については、阪急ならではの「グローバルで通用する魅力あるスペシャリティコンテンツ」の開発を進めているという。  かつては「ビジネス街」「歓楽街」という印象が強かった大阪キタ・梅田エリアであるが、1990年代からの再開発により、その姿は大きく変わることとなった。  今後、梅田エリアでは2019年に「ヨドバシ梅田タワー」が竣工するほか、今年夏には梅田貨物駅跡地を再開発する「うめきた2期」の事業者も決定する予定だ。

鉄道用地の再開発により2001年に開店した「ヨドバシカメラマルチメディア梅田」。現在同社で最も売り上げが多い店舗となっており、隣接して新館「ヨドバシタワー」の建設も進められている

 そうしたなか、日常生活を豊かにすることを目指す「阪神百貨店」と、上質なカルチャーを提案して非日常の極みを目指す「阪急百貨店」という、永年ライバル関係にあった百貨店同士の連携は、梅田エリア全体の価値を高め、梅田を国内外から多くの客を集める「一大文化拠点」へと成長させる一端を担うことに繋がるであろう。  再開発で生まれ変わる梅田の街と、街とともに成長していく2つの百貨店の今後が楽しみだ。

近く再開発が開始される貨物駅跡地の「うめきた2期」地区。JR大阪駅に隣接するが、現在は更地のままだ

<取材・撮影/淡川雄太 文/淡川雄太 若杉優貴(都市商業研究所)> 都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken
1
2
3
4