現場の与党側関係者も、「女性知事いらない発言」に問題意識なし
花角陣営に入っている選挙プランナー、三浦博史氏の得意技は、候補者の娘を露出させることだ。辺野古新基地建設容認へと変節をした仲井眞弘多・元沖縄県知事の選挙でも、年齢差のある相手候補に対抗すべく、タスキ姿の娘を登場させた。高齢の仲井真氏と娘が並ぶことで平均年齢を下げ、相手候補との年齢差をあまり感じさせないようにするという印象操作だ。
今回の新潟県知事選でも「新潟初の女性知事を」とアピールする相手陣営の強調点(違い)を薄める狙いなのだろう。しかし“娘登場作戦”で見た目の若さや女性露出度をアップさせるだけで、娘さんのような若い女性の真っ当な感覚を取り入れる姿勢は皆無だった。
6月2日の花角氏直撃の後、現場にいた三浦氏に「女性知事いらない発言」について聞くと、「有権者とのコミュニケーションを妨害しないでください」とだけ答え、発言については何も答えなかった。さらに『朝日新聞』の記事が出た6月3日、長岡市での街宣に同行していた柄沢正三幹事長(自民党県議)や星野伊佐夫県議にも同じ質問をしたが、「朝日の記事は読んでいない」と答えた。
街宣の現場で多くの関係者に「女性知事いらない発言」について聞いてみたが、問題意識を持っていたのは(筆者が聞いた限りでは)花角氏の娘さんただ一人だけだった。
『朝日新聞』の報道が出た6月3日、野党側の池田千賀子候補(右から2人目)を応援する女性たちは批判の声を強めた
一方、池田千賀子候補の陣営はこの発言に対し、一斉に反発した。選対本部長の菊田まきこ衆院議員が6月3日の街宣で「どこが(安倍首相が言う)『女性が輝く社会』なのですか。結局、経済界のリーダーはこんな感覚。『女なんか、いらない』という発想」と批判。同日に新潟市入りをした立憲民主党の蓮舫元民進党代表も、こう呼びかけた。
「セクハラ被害者の訴えより加害者と疑われた部下を守る(麻生)財務大臣。『女性知事は必要ない』と与党候補を支援する演説で公言した商工会長。『男性の育児は子供に迷惑』と明言したり、『3人産んだほうがいい』と公言したりする自民党議員たち。もう、たくさんだ。変えましょう、社会を」
野党幹部が池田氏の応援演説に駆けつけた6月2日には、国民民主党の大塚耕平共同代表が囲み取材でこう強調した。
「与党の応援演説でそうした発言があったなら、与党としての謝罪が必要だ。知事選で女性に対する認識が露呈するなら、そのものが与党の体質を表している」
身内に甘く、女性を蔑視、回答を求めれば「記憶にない」と答える。支援団体である商工会幹部の女性差別発言を黙認する花角氏と、最近の与党の姿勢を重ね合わせたわけだ。与野党激突の構図がますます強まる新潟県知事選の結果が注目される。
<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた
『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他
『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数