人にはそれぞれ、モチベーションファクター(意欲が高まりやすい要素)があります。いわば、「やる気の源泉」と言える要素です(※参考:
「やる気の源泉」を見極めてマネジメントすると集団はうまく回る!)。例えば、変化を好み挑戦することで意欲が高まる人は「目標達成」、任されて仕事をすることでやる気が出る人は「自律裁量」、ポジションが上がることで気持ちが高まる人は「地位権限」に、それぞれモチベーションファクターがあると言えます。
一方、他のメンバーと協力することで意欲が高まる「他者協調」、リスクを抑え安定的に仕事を進めることでやる気が出る「安定保障」、バランスがとられている状態で気持ちが落ち着く「公私調和」にモチベーションファクターがある人もいます。どのモチベーションファクターを持っているか持っていないか、高いか低いかということは、良し悪しを示すものではなく、人それぞれの特性と言えます。
業務を進めやすかったか、進めにくかったかは、実は、自分自身のモチベーションファクターに左右されることが多いのです。
今回取り上げた事例は、「他者協調」のモチベーションファクターが高く、「安定保障」のモチベーションファクターが低い人の事例です。「謝罪訪問し商品を交換した」プロセスが進めやすかったのは、自分が他者協調のモチベーションファクターの持ち主だったので、相手の気持ちを受容し共感し、自身の謝罪の気持ちを相手に伝えやすく、苦情の解消につながった側面がありました。
一方、「在庫商品の確認、不良品の発見」のプロセスは、「安定保障」のモチベーションファクターが低かったため、一件一件正確に持続的に確認作業を続けることが得意でなく、時間がかかってしまいました。
自分のモチベーションファクターが低いアクションについて、能率が上がらないものです。だとすれば、どのように解決すればよいでしょうか。
アクションに合致したモチベーションファクターの持ち主に依頼する
それは、自分のモチベーションファクターを変えて、業務に必要なモチベーションファクターを高めればよいということになります。この事例では、「安定保障」のモチベーションファクターを高めればよいのです。
低いモチベーションファクターを高く変える方法にはいくつかの方法がありますが、最も簡単な方法は、自分の高いモチベーションファクターと低いモチベーションファクターを組みわせる方法です。
この事例では、「他者協調」のモチベーションファクターが高く、「公私調和」のモチベーションファクターは低く、低い「安定保障」のモチベーションファクターを高くする場合には、「他者協調」して「安定保障」に資する業務を行うのです。
一人で在庫確認をするのではなく、協力してくれる人を探して、一緒に行うと、このケースでは効率が上がるのです。
高いモチベーションファクターと低いモチベーションファクターを組み合わせてアクションしても効果が出ない場合は、自分でアクションすることを断念して、この事例では「安定保障」という、自分にとって低いモチベーションファクターの持ち主を探して、その人に依頼するという方法も、プロセス全体の効率性を高める観点からは効果的です。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第84回】
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある