懲戒免職になった馬券3億円税課職員のギャンブル戦略を分析してみた

購入戦術はどんなものだったのか

 脱税発覚時の報道によると中央競馬のWIN5で大きな的中が2回あり、合計で約4.3億もの払戻を受けていたとのことだが、今回の報道で利益は約3億と報じられている。この発表通りであれば計算すると投資総額は1.3億となり、回収率は驚異の約330%だったと推測できる。  投資総額が1億円を超えていると聞くと狂気に感じるだろうが、払戻で得たお金をまた運用することを考えると驚くほどの額ではないといえる。筆者もボートレースや競輪を中心としたギャンブラーで生計を立てていた頃の1年間における総投資額は1千万円程だったのだが、1日平均3万円を購入していれば達する額である、的中して戻ってきたお金を使ってまた購入する額も総投資額には入ってくるわけで、何も1千万円も運用資産を持っていたわけではない。投資総額が1億円でした、といっても株で1億円投資している、というのとは全く違うのだ。おそらくは元課長も、大きくあてたレースに巨額の資金を張ったわけではなく、コンスタントに馬券を購入して小さくても確実に収支をプラスにしている中で2回の大きな的中をモノにしたと思われる。  それでもさすがに1億円を「回していた」のは大きな額だなあと思う。  余談だが、よくあまりギャンブルをやらない人に万馬券が当たったと言うとすぐに「メシ奢ってくれ」なんて言われる訳だが、その前にいくら投資していたのかという話がまず欠落している。1万円の万馬券が当たっていても2万円投資していたら1万円の負けだ。大きく当たっているから勝っているわけじゃない。これはギャンブルを楽しむ上でも基本のギャンブルリテラシーだ。  話を戻そう。元課長は1回のWIN5につきどれだけの購入をしていたのか。WIN5は2011年4月24日から原則日曜日の対象に発売されている。大きな的中が2012年と2014年にあったとあり、脱税が最初に報じられたのが2016年11月1日(この時点ですでに追徴課税まで含めて納付したとのこと)だ。WIN5発売当初から発覚直前まで毎週参加していたとするのが最長期間(2011年4月~2016年10月・約5年半)となり、ざっくり1年を50週とすれば約270回になる。これを総投資額と思しき1.3億円から回数で割ると、1回あたりの平均購入額は約48万円となる。  もちろん購入期間は最長期間の推定であり、途中でも参加していない回があるのかも知れない。とすれば平均購入額はもっと上昇することになる。

「ゆらぎ」で得た偶然か? 高配当帯を狙い撃ちしていたのか?

 WIN5は1点100円で購入できるため、48万円なら4800通りの目を購入していたことになる。ちなみに理論上WIN5にて発生しうる目のパターンは全て18頭立てであれば1,889,568通り。4800通りでは全体の0.2%をフォローしたことになる。  この0.2%に統計上の「ゆらぎ」がうまくひっかかった強運の持ち主なのか? それとも0.2%を狙い撃つ天才であったのか? こう考えると、いずれにせよギャンブラーとしては優秀なオヤジではある。 【シグナルRight(佐藤永記)】 半勤半賭のセミギャンブラー。私は大勝ちよりもコツコツ当てていきたい派。Twitterやニコ生『公営競技大学』にて公営競技について解説をしている。@signalright 公営競技大学
公営競技ライター・生主。シグナルRightの名前で公営競技の解説配信活動「公営競技大学」を個人運営している。また、日刊SPA!のギャンブルコーナー勝SPA!編集担当も。Twitter:@signalright
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