「ブラック企業なら転職すればいい」論が見ていない、低賃金労働層転職の現状

3つの「ない」に対して何の対策も打たれていない

転職者の悩み 振り返ると、多くの転職する側には3つの問題が起きていることになる。 《多くの転職者が抱える「3ない」実態》 ・低賃金によって日本人の3割以上が「貯蓄がない」による転職活動の制限 ・高稼働によってもたらされた「時間がない」による転職活動の制限 ・自己都合退職であれば失業保険給付が遅れる「給付がない」  ブラック企業から抜け出すために転職をしなくては苦しい人々であればあるほど、転職活動にまつわる手助けがなにもないのが現状だとわかる。ちなみに自己都合退職でも、高稼働を自ら証明し実質会社都合退職のような扱いに変更できる制度は存在するのだが、勤務実態などを自力で証明せねばならず手間は大きい。  核家族化や貧富の差の拡大で、転職にまつわる環境が悪化しているにもかかわらず、現状は余裕のある人だけが転職「しやすくなっている」状況だ。貧しければ貧しいほど、悪い労働環境の職場で働く人ほど、まず転職の土俵に立つことが難しくなっているのだ。  しかし、そうした現実について、今なんの問題のない「富裕層」や「余裕のある層」からは「自己責任」や「努力不足」の冷たい一言で片付けられてしまう。  果たして、低賃金・高稼働のまま働く人が転職できないのは、本当に「自己責任」だけなのか? 個別のブラック企業に対しての規制と同時に、こうした制度的な「抜け出しにくさ」を改善しなければ、何も変わらないのではないだろう。  しかしそれでもなお、安倍政権は「働き方改革」などという名前だけの改革案のもとに、「高度プロフェッショナル制度」のような、よりいっそうブラックな労働環境を広めるような政策を進めているのが現実なのだ。 <取材・文/HBO取材班>
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