ブラック企業を抜け出すために自己都合退職となった場合、制約が多いのが実情だ。
「覚悟はしていましたが、やはり3か月先でないと失業保険が受け取れないのは厳しかったです」(Bさん・40代)
日本では失業保険の制度がある。転職活動をしていることを条件に、失業給付金を得られる制度だ。しかし、会社都合退職と自己都合退職でその取扱には雲泥の差がある。会社都合退職(会社側の都合での解雇など)ならば、失業保険の給付は約1か月後から開始される。退職前の給料が得られなくなるタイミングから実質給付が受けられるわけだが、これが自己都合退職となると3か月後になる。(※5/13追記:ブラックな労働環境やパワハラなどで退職した場合、その旨を証明できれば特定受給資格者として3か月の給付制限なしで受給可能になる場合があります)
もちろん、給付金目当ての退職を防ぐなどすぐに給付が開始されないことへの意義があるのはわかるのだが、低賃金・高稼働から脱出するために自ら退職を選ぶ選択肢を狭めているのが現状だ。
「私の場合は親戚の経済状況が悪く、転職活動中に助けてもらえるような状態ではありませんでした。貯蓄もなく、しかも転職活動中にバイトをするとその分は給付額が減額になるどころか、受給開始期間まで先延ばしになる。もう受給を諦めて、ずっとバイトしていました。なんとか3か月後に転職先を見つけられたからよかったものの…」(Bさん)
また、小さい子供がいる場合はさらに転職活動は困難を極める。貯蓄はあったものの苦しい転職活動になってしまったCさんの証言だ。
「失業保険を『諦めるようにできている』としか思えません。失業保険を受け取って失業者に認定されてしまうと、保育園に預けていた子供を預けられなくなるんです。『無職なんだから子供の世話できるだろ』って。すぐに転職先を探したいのに、一度無職になるだけで子供を保育園に預けられる権利を失う。もしすぐに転職できたとしても、イチから保育園を探し直して申し込み、抽選を突破しないと入れない。なので私は失業保険を受け取らずに転職活動をせざるを得なくなり、貯金がだいぶ削られてしまいました。」(Cさん)
ここまで来ると制度同士が喧嘩していて、転職者の実情に何も即していないことがよくわかる。