CC0 Public Domain
1950年代から60年代にかけて、ジョン・ウエインやエリザベス・テーラーといったハリウッドのスターやプライベートジェットを保有する富裕層がオアシスとして利用し、映画のテーマにもなり、またケネディ大統領夫妻のハネムーン先でもあったメキシコのアカプルコ(Acapulco)。
そんなアメリカ人にとっての楽園とも言えるリゾート地だが、それから半世紀が過ぎた今、殺人事件の多発している都市に変身している。
現在、麻薬組織カルテルが蔓延るメキシコで、アカプルコは10万人当たりおよそ100人が殺害されるという危険都市になっている。アカプルコでは、昨年は800人が殺害され、今年に入って4月までで既に300人が殺害されているという。(参照:「
Yucatan」)
殺人事件が多発している要因は、麻薬の販売をコントロールしようと犯罪グループの間での縄張り争いからである。アカプルコはゲレロ州にあり、この州はメキシコで最も犯罪が多発している自治州のひとつである。同州では嘗てカルテルのベルトゥラン・レイバ(Beltrán Leyva)が存在して麻薬市場をコントロールしていたが、そのリーダーが死亡した後、組織は分散し逆に数十の犯罪組織となって縄張り争いを展開しているというのが現況である。
例えば、3月18日にアカプルコで名高いビーチであるカレティーリャ・ビーチで、避暑客がいる中で2人が銃で撃たれて死亡している。その週末は結局アカプルコで7人が殺害されたことになったという。
4月15日にも、6人が殺害され、その一人は同じカレティーリャ・ビーチで昼過ぎに海に入っていたところで銃撃されて死亡している。
それでもまだアカプルコは年間520万人の観光客が訪れる観光地だ。しかし、そこに訪れる外人観光客は武装した兵士が警備する中で避暑を愉しんでいるわけだ。
ただ、その観光客の質も大きく変化している。1970年代から80年代にかけて、規模の大きなホテルには外国からのハイクラスの訪問客で溢れていたという。しかし、そのような豪華な雰囲気は今では失われてしまい、現在国内の中流層や下層クラスの観光客を主体に何とか存続しているという感じである。